【防災コラム】楽しい贅沢な防災!?――「かまくら暮らしの防災術」第3期スタート!

自然豊かで美しい街、鎌倉・湘南エリア。しかし、お気に入りの景色を楽しめる場所のすぐ裏側には、常に災害のリスクが隣り合わせで存在しています。「この街で、安心して自分らしく暮らし続けるにはどうすればいいだろう?」そんな問いから始まった「かまくら暮らしの防災術」が、この度ついに第3期を迎えました。

主宰する「鎌倉ひとはこ」の代表・上岡洋一郎と、アウトドアライフアドバイザーの寒川一さん&寒川せつこさんを講師に迎え、個性豊かなメンバーが集まった第1回目の講座。今回は「それぞれの備えを考えよう(非常用持ち出し品のアップデート)」をテーマに、熱いトークと知識のシェアが行われました。

防災は「特別な訓練」ではなく「生きることそのもの」

「防災というと、どうしても『構えて行う大変なもの』『訓練』というイメージが先行しがちですが、本来は服を着て、ご飯を食べて、自分の体調をコントロールする日常の延長、つまり『生きることそのもの』なんです」

そう語る講師の寒川一さんは、マイナス40度以下の極限環境での野外生活経験も持つアウトドアのスペシャリスト。寒川さんによれば、適切な道具と少しの「気づき」があれば、防災のハードルはもっと下げられるといいます。

第3期が目指すのは、義務感でガチガチに固める防災ではなく、「楽しい贅沢な防災」。自分にとって本当に大切なもの、大好きなものを防災のエッセンスとして取り入れ、日々の暮らしに豊かさをプラスしていくアプローチです。

【TALK SESSION】みんなが抱えるリアルな課題と、それぞれの「マイ防災」

講座の中盤では、市販の防災セットをそのまま用意するのではなく、「一人ひとりの環境や家族構成、ライフスタイルに合わせてカスタマイズすること」の大切さが共有され、参加者の皆さんからリアルな生活背景や課題が次々と湧き出しました。

山田さん(自治会防災担当/学校CS委員):

「私の地元の中学校で避難所運営訓練をやったんですが、子どもたちのアンケートを読んでハッとさせられましてね。『避難所は我慢する場所ではなく豊かさが必要だ』とか、『知らないおじさんの隣では寝られないから私は避難所を出ていきます』なんて声があったんです。

災害関連死の多さを考えても、今の暮らしの中に欠けている『顔見知りの安心感』や『プライベートな居場所』をどう確保するかが、これからの社会に求められている気がします」

寒川さん:

「まさにそうですよね。今の大人たちがどう生きるか、子どもたちに見透かされているような気がします」

馬場さん(3世代の食を考える):

「私は今、93歳の母と、私たち世代、そして中高生の子どもの3世代で暮らしています。まさに家庭の中に多様性がある状態です。母の身体的な状況を考えると、地域の避難所にみんなで移動するのは現実的にかなり難しいなと感じています。

だからこそ、自宅でどう過ごすか。普段から取り組んでいる『バリアフリーご飯』や『フェーズフリーご飯』の視点から、我が家なりの防災を深めていきたいんです」

高橋さん(茅ヶ崎市在住):

「私は海のすぐ近くに住んでいて、毎日散歩に行くんです。ふと周りを見渡したとき、近所の犬や、一生懸命遊んでいる子どもたちがたくさんいて……『もし今津波が来たら、この子たちはどこに逃げればいいんだろう?』と考えたら、防災の知識がマイナス50くらいの自分でも、何かできることを学びたくて、Facebookでイベントを見つけて飛び込んできました」

齊藤さん(5人のお子さんのママ):

「うちは子どもが5人いて、一番小さい子が年少なんです。家が海から近くて、津波の予測時間を考えると『8分で津波が来たら逃げ切れないよね』という場所にあります。5人を連れて災害のときにどう動けばいいのか、毎回この講座で皆さんと色んな角度からお話しすることで、すごく勉強になっています」

石井さん(フリースクール支援):

「普段、学校などの集団に馴染めない子どもたちの支援をしています。中には、防災訓練に出られない子もいます。集団の中に入るのが難しく、結局その日はお休みしたり。
もし本当に災害が起こったとき、その子たちの避難はどうなるのか?学校の枠組みに入りきれない子たちに対して、私たちが伝えてあげられることや、サポートできる環境を考えていきたいです」

寒川一さんの「究極の常時持ち出し品」から学ぶ、引き算と足し算

続いて、寒川さんが普段から車のシート下に備えているという、こだわりの防水ハードケース(ペリカンケース)の中身が披露されました。

  • 「1つのものに何役もの機能を持たせる」雨除けや防寒はもちろん、目隠しになり、四隅を留めれば即席のトイレシェルターにもなるカラーポンチョ。
  • 「技術があれば道具をシンプルにできる」車内放置での破裂リスクがあるガスや火薬(ライターなど)は避け、メタルマッチと麻紐(着火剤代わり)、そして煮沸消毒して川の水でも飲めるようにするための金属製カップを常備。
  • 「自然界で代用できないものを持つ」防水性のある薄い膜(ジップロックや45Lゴミ袋)や、靴のソール剥がれからシートの連結までこなす強粘着の「ダクトテープ」は、自然のもので代用がきかないため必須。
  • 「ケース自体もハードに使い倒す」頑丈なケースは、地面が濡れている時の椅子、枕、貴重品守り、時にはまな板代わりにもなる。
アイテム暮らしの防災に活きる「理由」と汎用性
貴重品パウチお札(千円札多め)、小銭、名刺、パスポートや免許証のコピー、災害用伝言ダイヤルの番号、家族写真。
バンダナ(布1枚)止血に使えるほか、ゴミ混じりの水を濾過するなど、1枚で何役もの機能を持つ。
カスタマイズメガネ万が一壊れたら致命傷になるため、デザイン度外視で目に合わせた予備を常備(災害時は再作製に時間がかかるため)。
耐水メモ帳&ペン油性マジック、濡れてもインクがにじまない特殊な紙を採用。携帯が使えない状況でのアナログな情報記録用。
小型ヘッドライトUSB(Type-C)で充電できる最新モデル。電池不要で、昼間にソーラーパネルで充電して併用する。
頑丈なフルサイズナイフ調理や薪割りなどハードユースに耐える1本。ケース(シース)に挿すとハンドルが延長される機能的なデザイン。
メタルマッチ&麻紐ライター等のガスや火薬は車内放置での破裂リスクがあるため、条件を与えないと火が出ないメタルマッチを選択。ほぐした麻紐を着火剤にする。
金属製カッププラスチック製はNG。川の水などを布で濾したあと、メタルマッチで起こした火にかけて煮沸消毒して飲むために必須。
ホイッスル(笛)防犯や、声を張り上げずに人を呼ぶためのもの。中にボールが入っていないタイプ(濡れても音が鳴るダイソー製品など)を選ぶのがコツ。
パラコード(紐2m)骨折時の副木(落ちている枝など)を固定したり、止血帯にしたり、シートと組み合わせて屋根を作ったりと、自然界で代用できない最重要アイテム。
救急セット最低限のカットバン(絆創膏)など。
衛生用品耳栓、水なしでも抗菌作用で磨ける歯ブラシ、マスク(繰り返し洗えるタイプ)、ティッシュペーパー。
ダクトテープガムテープの何倍もの粘着力を持つ強粘着テープ。芯を抜いて平らに巻いて省スペース化。エマージェンシーブランケットを繋いで大きなシートにしたり、剥がれた靴底をぐるぐる巻きにして修繕できる。
ツールナイフ(レザーマン)ハサミ、小型ナイフ、ドライバー、ピンセット、ペンチ、ノコギリなどが一体になった、細かな作業や乗り物の修理までこなせる万全の工具。
ジップロック(2枚)携帯の防水ケースになるほか、ワークショップではこれを使ってご飯を炊くこともできる、熱に強い厚手のフリーザーバッグ仕様。
45Lゴミ袋(2枚)被って雨具に、防寒に、もちろんゴミや汚物入れに。手袋代わりに使って物を掴むなど、自然界にない「防水性のある薄い膜」として常備。

寒川さんが「何かあったらこれだけ持って逃げる」と、普段から車のシート下に備えているオレンジ色の防水ハードケース(ペリカンケース)。その中に厳選された、引き算と足し算の結晶であるアイテムの数々です。

寒川さん:

「ある海洋冒険家の友人が、カヤックで日本一周したとき、一番お金をかけたのが5〜6万円する高級な簡易ベッド(コット)だったんです。食べ物は海にも潜れば魚がいるけれど、ゴツゴツの岩場や砂地でも『睡眠(熟睡)』をしっかり取って体力を回復させないと命に関わる、と。

気が張る被災生活だからこそ、自らを自らでケアし、労る視点を持つ。これが僕たちの言う『贅沢な防災』のヒントになります」

「想定外」に強い余白を持とう

綺麗にパッキングされ、完璧に計画された防災システムは一見素晴らしく見えますが、寒川さんは「想定外のアクシデントが起きたときにポキッと折れてしまう弱点もある」と指摘します。

大切なのは、計画を実践しつつも、自分の性格やシステムの弱点を自覚し、「トラブルに対応できる少しの余白(技術や紐一本のような汎用性の高い道具)」を持っておくこと。防災バックの中身には、その人の生き方や優先順位、すなわち「分身」そのものが現れるのです。

今期からの新しい挑戦:みんなでつくる「課外授業」

かつては「避難所へ行くこと」が防災のスタンダードでしたが、現在はプライバシー確保の観点や、行政のマンパワー不足から「在宅避難」や「車中泊・テント避難」など、自分たちで生き抜く自活力を高める選択肢を個々が持っておくことが求められています。

第3期からは、ただ講義を聞くだけでなく、受講者の皆さんの「これを知りたい!」「みんなでこれをやってみたい!」という声を起点にした課外授業やフィールドワーク(焚き火での火起こし、川の水の浄水、ロープワークなど)をさらに充実させていきます。

「かまくら暮らしの防災術」は、この街に暮らす私たちが、心地よい日常を守りながら、もしもの時にもしなやかに生き抜くための温かいコミュニティです。互いの顔が見える安心感を紡ぎながら、一歩ずつ自分らしい防災のカタチを作っていきましょう!

次回のテーマは:『アウトドア防災の可能性について(行動の原点)』

皆さんとさらに深い対話ができることを楽しみにしています!

◽️今後予定しているイベント一覧

③体温をどう守るか(レイヤードシステム、寝袋、マットなど学ぶ)
7月9日(木)18:00~20:00
④トイレ問題(使い捨てトイレ各種実験、衛生問題を語り合う)
7月23日(木)18:00~20:00
⑤アイデア防災クッキング1(実用性のある防災料理をつくる)
8月6日(木)18:00~20:00
⑥鎌倉の地形を学ぶ(ハザードマップや等高線などから鎌倉独自の地形を学ぶ)
8月27日(木)18:00~20:00
⑦アイデア防災クッキング2(実用性のある防災料理をつくる)
9月10日(木)18:00~20:00
⑧楽しいロープワーク(日常で実用性の高いロープワークを学ぶ)
9月24日(木)18:00~20:00

アウトドアライフアドバイザー 寒川ご夫妻のご紹介

寒川一さん

 アウトドアライフアドバイザー。アウトドアでのガイド・指導はもちろん、メーカーのアドバイザー活動や、テレビ・ラジオ・雑誌といったメディア出演など、幅広く活躍中。とくに北欧のアウトドアカルチャーに詳しい。東日本大震災や自身の避難経験を経て、災害時に役立つキャンプ道具の使い方・スキルを教える活動を積極的に行っている。
著書に『新時代の防災術』『「サボる」防災で生きる』『これからのキャンプの教科書』他

寒川せつこ さん

アウトドアの知恵を生かした災害時にも役立つ料理をメディアやワークショップなどで伝える。北欧の暮らしのエッセンスをレシピにも取り入れている。

◽️

参加者の方の声

鎌倉市在住 Yさん
必ず来る自然災害。その時に大切なのは「自分や家族を守り抜くスキル」があればと受講しました。
「起こらないだろう」という正常性バイアスにとらわれず、自助の力としてのアウトドア防災を身につけておくこと。
それは周囲に依存せず、迷惑を最小限にとどめる備えと考えて参加し続けています。

逗子市在住 Iさん
防災用に買った浄水器を使わずにいたけれど、鎌倉の湧水ワークショップを知り関心が高まりました。監修は焚き火カフェの寒川さん。インスタで見つけた防災講座に1月から参加し、毎回新しい発見があります。いつか自分の体験をもとに、防災ワークショップの輪を広げていきたいと思っています。

鎌倉市在住 Sさん
防災という非日常を意識する行為をいかに日常に溶け込ませるか、という点に意識を置かれている講座です。 各回それぞれの学びがとても深いのももちろんですが、連続して参加することにより、定期的に防災について考える機会ができ、意識が自然と高まる事が他の講座にはない魅力だと思います。いつでもどなたでも参加できます!

暮らしの防災コラム(第2期)

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この記事を書いた人

こんにちは、上岡洋一郎です。
鎌倉生まれ育ちの36歳、ハウスメーカー営業、不動産投資会社を経て、不動産屋さんをやっています。不動産を通してこの地域がもっとワクワクできないか、いつも模索しています。

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