【防災コラム】災害時、本当に困る「トイレ問題」に向き合う!

【開催レポート】〜かまくら暮らしの防災術〜

なぜ「トイレ対策」が最優先なのか?

サバイバル「3の法則」と排泄のリアル

人間が生き延びるための優先順位を示すサバイバルの「3の法則」(3分=呼吸、3時間=体温保持、3日=水分、3週間=食料など)において、水分補給や食事と同等、あるいはそれ以上に素早い対応が求められるのが「排泄」です。

東日本大震災のデータ等によると、避難者の約7割が災害発生から6時間以内に排泄を催したとされています。人は約5時間(300分)ごとに排泄の波が訪れるため、断水やトイレが使えない事態が発生した際、私たちは5〜6時間以内にトイレ環境を整えなければなりません。

サバイバルの「3の法則」に、今回のテーマである「排泄(300分/約5時間)」を位置付けた一覧表です。

人が生存・生活を維持する上で、排泄への対応がいかに初期段階で必要となるかがひと目でわかります。

【排泄も含めた】サバイバル新「3の法則」

目安の時間生存・維持に必要な要素理由・主な対策
3分呼吸(酸素)酸素が絶たれると脳障害や生命の危機につながるため、最優先で確保する。
3時間体温保持(体温)酷感・酷暑に晒されると低体温症や熱中症を引き起こすため、シェルターや衣服で体温を守る。
300分
(約5時間)
排泄(トイレ)避難者の約7割が6時間以内に排泄を催す。
我慢による体調不良(尿路感染症やエコノミークラス症候群)や、衛生環境の悪化を防ぐため、初期段階でのトイレ確保が必要。
3日水分(水)脱水症状による生命の危険を防ぐため、1人1日3Lを目安に水分を補給・確保する。
3週間食料(食事)水分が確保できていれば一定期間絶食に耐えられるが、体力を維持・回復するために備蓄食料を活用する。

ポイント

生存の限界としての「3日(水)」「3週間(食料)」に到達するはるか手前(災害発生から数時間以内)で「排泄(約300分)」の限界・欲求が訪れます。そのため、非常用トイレの準備は「食料や水の備蓄」と同じか、それ以上に優先度の高い防災対策と言えます。

実践!非常用トイレの正しい使い方とコツ

会場では、実際に非常用トイレや各種グッズを前にしながら、具体的な使用手順や工夫について議論が交わされました。

  • 二重袋の徹底:便器に直接排泄袋を被せるのではなく、水濡れや汚れを防ぐための保護用(カバー用)袋をまずセットし、その上に排泄用袋を重ねるのが鉄則です。
  • 凝固剤の選び方と使い方のコツ
    • タイプ:広く使われる「粉末タイプ」のほか、設置が簡単な「シートタイプ」、徐々に溶ける「タブレット(錠剤)タイプ」があります。使いやすさや全体への行き渡りやすさから「粉末タイプ」が扱いやすいという意見が多く上がりました。
    • ポイント:凝固剤は袋の端まで満遍なく振りかけることが大切です。服薬中の人の尿などは固まりにくい場合がありますが、少量の真水を足すとなじみやすくなります。
  • 防臭・密閉の工夫
    • 排泄後はしっかり空気を抜いて結ぶことに加え、防臭袋やジッパー付き袋、蓋付き容器を活用します。
    • さらに、充電式のヘアアイロン等の熱を利用して袋の口を熱圧着(シーリング)すると、臭い漏れを強力に防ぐことができます。
    • 車中や野外など人目が気になる場所では、目隠し用ポンチョを羽織ったり、立ち姿・膝立ちの姿勢をとることで失敗を防げます。

備蓄量とマンション・一戸建ての注意点

  • 備蓄量の目安:1人1日5〜8回と想定した場合、家族の人数やインフラ復旧までの期間(1ヶ月近くかかるケースも想定)を考慮し、家庭によっては200〜500回分程度を用意している参加者もいました。
  • 保管場所の落とし穴:マンションのベランダに放置すると、カラスや害虫に荒らされたり、日光・風雨で劣化して破損するリスクがあります。また、庭に埋める方法は分解に年単位の時間がかかるため推奨されず、ゴミとして回収されるまで安全に保管する環境づくりが必要です。
  • 水やトイレを「流してはいけない」理由:地震で建物の配管が破損している場合、水やトイレを流してしまうと階下への漏水や天井裏への浸水といった甚大なトラブルを引き起こします。建物の安全確認(下の階からの排水テスト等)が取れるまでは、自宅のトイレであっても水は流さず、非常用トイレを使用することが徹底されるべきです。

アウトドアの視点から学ぶ「野外での3つの配慮」と衛生マナー

どうしても野外や自然の中で排泄せざるを得ない場合における、アウトドアの鉄則(3つの配慮)についても共有されました。

  1. 自然への配慮:土中のバクテリアが活動しやすい浅い層(15〜20cm程度)を掘って埋める(深すぎる穴は分解が進まない)。トイレットペーパーは分解されにくいため土に埋めず、必ず持ち帰る。水源(川など)からは下流であっても50m以上離れる。
  2. 人への配慮:登山道や人が通る場所から離れ、他人の迷惑にならない場所を選ぶ。
  3. 自分への配慮(安全第一):人目を避けようとして急斜面や滑落危険地帯に入り込まない。足元が安定した安全な場所で行う。

また、アイスランドの公衆トイレの事例(掃除用具と「汚したら自分で綺麗にしましょう」という案内を置くことで清潔が保たれている)が紹介され、避難所などの共同トイレにおいても「次に使う人のために自分で綺麗にする」という意識とルールづくりが重要であることが強調されました。

次回のお知らせ

次回の「かまくら暮らしの防災術」は、8月6日に開催予定です。 テーマは「アイデア防災クッキング(防災料理)」! 非常時にもおいしく・温かい食事を作るための知恵と工夫を学びます。皆様のご参加をお待ちしております。

◽️今後予定しているイベント一覧

⑤アイデア防災クッキング1(実用性のある防災料理をつくる)
8月6日(木)18:00~20:00
⑥鎌倉の地形を学ぶ(ハザードマップや等高線などから鎌倉独自の地形を学ぶ)
8月27日(木)18:00~20:00
⑦アイデア防災クッキング2(実用性のある防災料理をつくる)
9月10日(木)18:00~20:00
⑧楽しいロープワーク(日常で実用性の高いロープワークを学ぶ)
9月24日(木)18:00~20:00

アウトドアライフアドバイザー 寒川ご夫妻のご紹介

寒川一さん

 アウトドアライフアドバイザー。アウトドアでのガイド・指導はもちろん、メーカーのアドバイザー活動や、テレビ・ラジオ・雑誌といったメディア出演など、幅広く活躍中。とくに北欧のアウトドアカルチャーに詳しい。東日本大震災や自身の避難経験を経て、災害時に役立つキャンプ道具の使い方・スキルを教える活動を積極的に行っている。
著書に『新時代の防災術』『「サボる」防災で生きる』『これからのキャンプの教科書』他

寒川せつこ さん

アウトドアの知恵を生かした災害時にも役立つ料理をメディアやワークショップなどで伝える。北欧の暮らしのエッセンスをレシピにも取り入れている。

◽️

参加者の方の声

鎌倉市在住 Yさん
必ず来る自然災害。その時に大切なのは「自分や家族を守り抜くスキル」があればと受講しました。
「起こらないだろう」という正常性バイアスにとらわれず、自助の力としてのアウトドア防災を身につけておくこと。
それは周囲に依存せず、迷惑を最小限にとどめる備えと考えて参加し続けています。

逗子市在住 Iさん
防災用に買った浄水器を使わずにいたけれど、鎌倉の湧水ワークショップを知り関心が高まりました。監修は焚き火カフェの寒川さん。インスタで見つけた防災講座に1月から参加し、毎回新しい発見があります。いつか自分の体験をもとに、防災ワークショップの輪を広げていきたいと思っています。

鎌倉市在住 Sさん
防災という非日常を意識する行為をいかに日常に溶け込ませるか、という点に意識を置かれている講座です。 各回それぞれの学びがとても深いのももちろんですが、連続して参加することにより、定期的に防災について考える機会ができ、意識が自然と高まる事が他の講座にはない魅力だと思います。いつでもどなたでも参加できます!

暮らしの防災コラム(第2期)

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この記事を書いた人

こんにちは、上岡洋一郎です。
鎌倉生まれ育ちの36歳、ハウスメーカー営業、不動産投資会社を経て、不動産屋さんをやっています。不動産を通してこの地域がもっとワクワクできないか、いつも模索しています。

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