【防災コラム】「体温を守る」から考える、私たちの日常と災害時のリアル

「かまくら暮らしの防災術」今回テーマは、人間の生存に直結する「体温を守る」について。

アウトドアの知恵や災害時のリアルな体験談をもとに、私たちが日常から意識すべき防災のヒントを探りました。

■ なぜ「衣」が最優先なのか? 体温維持の重要性

私たちが生きていく上での基本である「衣・食・住」。この中で最も優先順位が高いのは、実は「衣」です。

人間は生まれた瞬間、真っ先に衣類を身にまといます。動物のように自前の毛皮で体温を維持する仕組みを持っていない私たちは、衣服を着ることが大前提の生き物だからです。

今回のイベントでは、この「体温を守る(=平熱を維持する)」という観点から、夏・冬それぞれの命に関わるリスクとその対策について深く掘り下げていきました。

■ 夏の敵「熱中症」と冬の敵「低体温症」

人間の平熱(約36度〜37度)は、わずか数度上下するだけで生命の危機に直結します。

季節警戒すべきリスク主な対策・ポイント
熱中症・水分だけでなく、ミネラル(塩分)をセットで補給する(初期症状が出る前の先手が重要)
・日陰や風通しの良い場所で体力を温存する
・手のひらにある体温調節のための「AVA血管」を適度な温度の水などで冷やす
低体温症・体の芯の温度が35度以下になると低体温症と診断される
・濡れた衣服はすぐ脱ぎ、毛布でくるんで内側から温かい飲み物を摂る
・急激に外側から温めたり、手足を強くさするのは避ける(冷えた血液が急に心臓へ戻るのを防ぐため)

【参加者のリアル体験談①:家の中での熱中症】

「睡眠不足の翌日、5月の真夏日一歩手前の日に家の中で熱中症になりました。涼しかった気候から急に気温が上がったことで、体が暑さに追いつかなかったのだと思います。ひたすら涼しい部屋で経口補水液などを飲んで休みました」

―― エアコンが使えない災害時の室内でも、同様のリスクが十分に考えられます。

■ アウトドアの知恵「3レイヤードシステム(重ね着)」

災害時、特に冬場の避難生活などで体温を奪われないようにするためには、アウトドアの基本である「3レイヤードシステム(重ね着)」の知識が役立ちます。

  1. ベースレイヤー(肌着)
    • 役割: 克服すべき課題は「汗」。かいた汗を肌に留めず、冷え(汗冷え)を防ぐこと。
    • おすすめ素材: 汗を吸ってもベタつきにくく、体感的に濡れた感じが少ない「メリノウール」などが優秀です。
  2. ミドルレイヤー(中間着)
    • 役割: 克服すべき課題は「空気」。衣服の間に温かい「空気の層(空気層)」を作り出すこと。
    • おすすめ素材: フリースや、空気を多く蓄えられる軽量なダウンウェアなど。
  3. アウターレイヤー(上着・シェル)
    • 役割: 克服すべき課題は「外気(雨・風・雪)」。せっかく温めた空気層を外敵から守るための“蓋”の役割を果たします。

衣服を細かく重ね着(レイヤード)しておくことで、暑くなったら1枚脱ぐ、寒くなったら羽織る、といった「こまめな温度調整」が可能になります。

■ 避難所での睡眠を守る:冷気・底冷え対策

災害時の避難生活(体育館など)では、床からの冷気(底冷え)をいかに遮断するかが睡眠の質を左右します。イベントではエマージェンシーブランケットや簡易ベッド(コット)、マットの重要性も実演を交えて紹介されました。

  • エマージェンシーブランケット(アルミシート): 自身の自熱を反射して温める効果が絶大です。体育館などで使用する際は、ガサガサと音がしない「静音タイプ」を選ぶのが避難所でのマナーとしても推奨されます。
  • ベッド(コット)とマット: 地面から体を浮かせる(空間を作る)ことで、床からの底冷えや湿気をダイレクトに受けるのを防ぎます。

【参加者のリアル体験談②:雪山での一晩】

「冬の雪山で道に迷って遭難しかけた際、動くのをやめて、雪が積もっていない『木の根元の空洞(穴)』に身を潜めて一晩を明かしました。生きている木の根元にはわずかに温度があり、空間が保たれていたため、風雪を凌いで体力を温存することができました」

―― 「むやみに動かず体力を温存する」「風雨を凌げる空間を見つける」という冷静な判断が命を救った、貴重な事例です。

編集後記:大切なのは「知る」こと、そして「対話」を続けること

今回のワークショップを通じて改めて感じたのは、防災は「特別な道具を揃えること」だけではなく、「人間の体の仕組みを知り、日常の知恵をどう応用するか」であるということです。

「かまくら暮らしの防災術」では、今後も単なる座学にとどまらず、地域の皆さんや様々な専門家を交えながら、もしもの時に役立つリアルなシミュレーションや対話を続けていきます。

次回のテーマは、これまた避難生活の大きな課題である「災害時のトイレ(食べる前に出す)」について。皆さんもぜひ、一緒に学びを深めていきませんか?

◽️今後予定しているイベント一覧

③体温をどう守るか(レイヤードシステム、寝袋、マットなど学ぶ)
7月9日(木)18:00~20:00
④トイレ問題(使い捨てトイレ各種実験、衛生問題を語り合う)
7月23日(木)18:00~20:00
⑤アイデア防災クッキング1(実用性のある防災料理をつくる)
8月6日(木)18:00~20:00
⑥鎌倉の地形を学ぶ(ハザードマップや等高線などから鎌倉独自の地形を学ぶ)
8月27日(木)18:00~20:00
⑦アイデア防災クッキング2(実用性のある防災料理をつくる)
9月10日(木)18:00~20:00
⑧楽しいロープワーク(日常で実用性の高いロープワークを学ぶ)
9月24日(木)18:00~20:00

アウトドアライフアドバイザー 寒川ご夫妻のご紹介

寒川一さん

 アウトドアライフアドバイザー。アウトドアでのガイド・指導はもちろん、メーカーのアドバイザー活動や、テレビ・ラジオ・雑誌といったメディア出演など、幅広く活躍中。とくに北欧のアウトドアカルチャーに詳しい。東日本大震災や自身の避難経験を経て、災害時に役立つキャンプ道具の使い方・スキルを教える活動を積極的に行っている。
著書に『新時代の防災術』『「サボる」防災で生きる』『これからのキャンプの教科書』他

寒川せつこ さん

アウトドアの知恵を生かした災害時にも役立つ料理をメディアやワークショップなどで伝える。北欧の暮らしのエッセンスをレシピにも取り入れている。

◽️

参加者の方の声

鎌倉市在住 Yさん
必ず来る自然災害。その時に大切なのは「自分や家族を守り抜くスキル」があればと受講しました。
「起こらないだろう」という正常性バイアスにとらわれず、自助の力としてのアウトドア防災を身につけておくこと。
それは周囲に依存せず、迷惑を最小限にとどめる備えと考えて参加し続けています。

逗子市在住 Iさん
防災用に買った浄水器を使わずにいたけれど、鎌倉の湧水ワークショップを知り関心が高まりました。監修は焚き火カフェの寒川さん。インスタで見つけた防災講座に1月から参加し、毎回新しい発見があります。いつか自分の体験をもとに、防災ワークショップの輪を広げていきたいと思っています。

鎌倉市在住 Sさん
防災という非日常を意識する行為をいかに日常に溶け込ませるか、という点に意識を置かれている講座です。 各回それぞれの学びがとても深いのももちろんですが、連続して参加することにより、定期的に防災について考える機会ができ、意識が自然と高まる事が他の講座にはない魅力だと思います。いつでもどなたでも参加できます!

暮らしの防災コラム(第2期)

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この記事を書いた人

こんにちは、上岡洋一郎です。
鎌倉生まれ育ちの36歳、ハウスメーカー営業、不動産投資会社を経て、不動産屋さんをやっています。不動産を通してこの地域がもっとワクワクできないか、いつも模索しています。

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