春の小道を歩きながら、ふと辿り着いたカフェに恋をする。そんな鎌倉散歩が好きな、ライターのはさみです。

鎌倉・佐助にある「佐助カフェ」は、まさにそんな風に出会うのに理想的なカフェ。昨年、取材させてもらったことをきっかけに、その圧倒的に心地よい空間とオーナーの島崎さんの想いを伺い、私もすっかり魅了されてしまいました。
(前回の記事はこちら)

昨年の取材では次の担い手に佐助カフェを引き継いで欲しいという想いを伺っていました。そして、嬉しいことにお店を任せられる方が決まり、今年の春(2026年4月)から新体制になると聞きつけ、お話しを聞いてきました!
4月からの佐助カフェを担うのは…「なみちゃん」こと、及川さんです!
(※ここからは親しみを込めて、なみちゃんと呼ばせていただきます)

実はなみちゃんは、佐助カフェ開業当初からお店に立っていた、常連さんにもお馴染みの店員さんだったといいます。しかし、昨年から1年ほどは、とある事情でお店を離れていたそうです。
そんな彼女がお店に戻ってくるきっかけや、佐助カフェに対する想いをたっぷり伺ってきました!

この記事をきっかけに、なみちゃんに会いたくなった方はぜひ、4月からの佐助カフェに足を運んでみてください。変わらない味のコーヒー、新作スイーツ、そしてなみちゃんが待っています。
「大好きな佐助カフェが、他の店になっちゃう!?」

なみちゃんが佐助カフェを離れたのは、1年ほど前。その決断の裏には、長年感じていた葛藤があったからだといいます。
「バレンタインだからチョコレートのお菓子やりたいよね」「次の季節のメニューは何にしよう?」とメニュー考案をするたびに、「私には実現させるための力がまだ足りない」と感じていたのだそうです。
「やっぱりもう一度、お菓子の基礎を学びたい」と思い立ち、オーナーの島崎さんにも背中を押してもらい一旦は佐助カフェを離れ学業に専念することになりましたが、彼女にとって、佐助カフェはいつでも帰れる場所として、ずっとそこにあり続けるものだとばかり思っていました。
ところがある日、久しぶりに島崎さんと食事をする機会があり、思いがけない話を耳にします。
「佐助カフェを、もっと福祉やアートで地域が繋がる場所にしたくて、飲食を誰かに譲ることにするんだよね。だからカフェじゃなくてレストランとかになるかもしれない」
「えー! 佐助カフェが変わっちゃうんですか!?」

なみちゃんは当時の心境をこんな風に振り返ります。
「自分の中でずっと続いていくものだと思って、安心していて。だからこそ学校にも行こうと思えたので、いまの佐助カフェの形がなくなってしまうのはちょっと寂しいなと思って。私もこのお店が大好きで働いていて、私自身の人生の中でも、やっぱり、この場所はすごく大切で、なくなってほしくない場所だと改めて思いました。なので、その想いを島崎さんにお伝えして『はい!私がやります!』と手を挙げさせていただきました。

町役場のような、開かれたカフェ
この1年間は、様々なお店でアルバイトも経験したなみちゃん。どのお店にも良さはあったものの、いざ佐助カフェに戻ってくると、「あ、やっぱりここが自分の居場所だな」と感じたそうです。
改めて、佐助カフェの魅力をお聞きしてみると、しばらく考えてから、こう話してくれました。

「観光の方もたくさん来てくれるんですけど、やっぱり、ご近所の方が『コーヒー飲みに来たよ』って言って来てくれる、あのゆったりとした時間が好きで。ちょっと前までベビーカーに乗ってたあの子が、もうランドセル背負っていたりして。そういう成長にもすごく感動するんです。そういう、地元との繋がりが強いのが一番の魅力だと思います。」
「これはちょっと、面白いなと思うところなんですけど……」と教えてくれたのが、ご近所さんに言われて印象に残っている、こんな言葉でした。
「あそこは町役場みたいな場所なのよ。困ったことがあったら、まずあそこに行こうって思えるの」。
確かに「ストーブが壊れちゃった!テレビが映らない…、水道がおかしい…」。そんな相談がひょっこり舞い込んで、気づいたら島崎さんがお店のストーブを抱えて運んでいたり、居合わせた常連さんが「直しに行くよ!」と一緒についていってくれたり。そういうことが、自然に起きてしまう場所。「そういう話を聞いた時に、ああ、この場所ってすごいなって」となみちゃんはしみじみ語ってくれました。
離れてみたからこそ気づく、佐助エリアの穏やかな魅力

「佐助は穏やかな緑があって、道沿いに季節のお花が咲いたり、実がなっていたり。観光地鎌倉の中でも、穏やかに過ごせる場所っていうのが魅力だなって思います。」
なみちゃんのお話を詳しくお聞きしていると、彼女の佐助というエリアに対する愛も伝わってきました。

東京に通うようになって、毎朝の通勤ラッシュに揉まれるようになり、時間の流れの速さにびっくりしたと笑って話してくれました。
対照的に、「佐助は鎌倉の中でも奥の方にあるので、10年経っても20年経っても変わらない場所や、馴染みの飲食店さんやお土産屋さんが多いと思います。『今日の駅はどんな感じ?混んでそう?』みたいな会話が生まれるぐらい、鎌倉の街中とは違う空気が流れていて。だからこそゆっくりコーヒー飲んでいただける場所であれるし、これからもそういう場所でありたいな、と思ってます。 」
1年間、離れてみたからこそ、ゆっくりできる時間の大切さを感じたといいます。だからこそ、「ここに来てくれた方には、本当に穏やかな時間を過ごしてもらいたいって、切実に思いました」と彼女は言います。

守り続けたいもの、そして新しく挑むもの
4月から本格的に佐助カフェを任されるなみちゃん、やりたいことは山ほどあると目を輝かせていました。でも、それと同じくらい「守り続けたいものがある」という気持ちも強いといいます。
「一つひとつのメニューに、繋がりとこだわりが詰まってるんです」。開業当初から何度も試作を重ねてようやく生まれた、佐助焼き。はさんでいるあんこは長谷のあんこ屋さんにお願いして作ってもらっています。
このお店のためだけにブレンドしてもらっているコーヒーには、「これを飲むために来た」と言ってくれるお客さんもいます。縁あって繋がった長野の牧場から届くソフトクリーム、地元の八百屋さんが持ってきてくれる鎌倉野菜、毎朝届くお肉屋さんの食材。「こういうものは、絶対変えたくない。変えちゃいけないと思ってます」。

その一方で、製菓学校で学んできたことも形にしていくために思案中だと教えてくれました。いちばん夢を語るように話してくれたのが、ショーケースにケーキを並べること。「ケーキ屋さんに並んでるケーキを見る時って、わーってテンションが上がるじゃないですか。それをここでも感じてもらいたいです。」


季節のスイーツ、サンドイッチ、器にまでこだわったプリン、マドレーヌやフィナンシェなどの焼き菓子、お酒を使ったスイーツ、鎌倉のイベントへの出店……。やりたいことを話し始めたら止まらなくて、取材中もどんどん出てきました。「実現するのにどのくらいかかるかは分からないけど、少しずつやっていきたいんです」と笑うなみちゃんの顔は、緊張が取れてとても楽しそうでした。

島崎さんからみた、なみちゃんの魅力

少し遅れて島崎さんも合流し、最後にお二人揃ってのお話を伺いました。
「彼女なら、佐助カフェの名前と今あるこの雰囲気を、しっかり継いでもらえるんじゃないかな、と直感しました」と島崎さんは話してくれました。
開業当初から関わっている彼女だからこそ、スプーンの色ひとつ、ケーキフォークの形ひとつ、開業前から一緒に選んできた経緯を知っている。なぜこの空間がこの雰囲気になったのか、ギャラリーが加わってから何がどう変わったか、全部見てきたのがなみちゃんでした。
そして、開業当初の原点である「地元コミュニティとの繋がり」を一番大切にしたいと言ってくれたのも、なみちゃんでした。
何より、彼女はいつも元気で明るくキッチンに立っていてくれる安心感があると、笑みをこぼしながら話してくれました。

「開業から6年経ったところで、彼女に任せられることで、第二段階に入ると感じています。鎌倉の人たちが佐助に来たらあそこに寄りたいね、と思ってもらえたり、ここを目指して佐助にきてもらえるようなカフェとして、よりよい場として育てていってもらえたら嬉しいと思います。」
4月以降も島崎さんご夫妻は週に1、2回お店に顔を出す予定。スタッフも変わらず。ギャラリーは引き続き島崎さんが担当していきます。「今後も私が管理する佐助カフェギャラリーを使ったカフェとのコラボイベント企画を色々と積極的にやっていきたい!」とのこと。

仲間も、お待ちしています
最後に、なみちゃんから鎌倉の皆さんへ呼びかけがありました。
「焼き菓子を作ったり、イベントに出店したりしていくと、ラッピングや販売のお手伝いが追いつかなくなってくると思っていて。お菓子作りのプロじゃなくても、このお店が好きで、一緒に挑戦してみたいなって思ってくれる方がいたら、ぜひ声をかけてほしいです」。
「なみちゃんなら大丈夫」と言ってくれる人がいると前に進める、とインタビューの中で話してくれていたなみちゃん。どうぞ皆さんも、そんな仲間になってあげてください。

さあ、春の佐助へ

「今までと変わらない佐助カフェでありつつ、新たなことにも少しずつ挑戦していきたいので、4月からもよろしくお願いします」。
そう語るなみちゃんの言葉は、そのままこの記事のタイトルになりました。

「緊張しいで、悩みだすと止まらない性格で」と照れくさそうに話してくれた彼女。でも、お店に流れる穏やかな時間の中で話を聞いていたら、そのまっすぐさと、目の前の人に安心感を与えてくれる存在感や温かさが伝わってきました。
ゆっくりとコーヒーを楽しみたい、アートや読書に浸りたいと思ったら、春の鎌倉を散策しながら、ぜひ佐助の小道をたどってみてください。コーヒーのいい香りと、なみちゃんが待っています。
インタビュー:Hasami

Hasami プロフィール 自然と人が共に豊かになる暮らしを求めて、湘南エリアを中心に活動するコーチ兼活動家。20代の頃に世界のエコビレッジを旅して、パーマカルチャーやマインドフルネス、コーチングなど、持続可能で平和な社会作りについて学ぶ。現在は「分断から統合」をキーワードに、人の内面を扱うコーチングを生業に活動中です。ライフワークとしてコミュニティガーデンづくりを行っています。ウクレレやマクラメ、暮らしの手仕事も好きです。資格:国際コーチ連盟認定ACC、パーマカルチャーデザイナー





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