かまくら暮らしの防災術 第2回レポート|テーマ:アウトドア防災の可能性
9月某日、寒川ご夫妻による「かまくら暮らしの防災術」第2回が開催されました。今回のテーマは「アウトドア防災」。防災士や専門資格を持たないご夫妻が、長年のアウトドア経験を通じて培った知恵をもとに、「遊びの延長がそのまま防災につながる」視点からお話をしてくださいました。

衣・食・住の優先順位
古来から日本に伝わる「衣食住」という言葉。寒川さんは、これを単なる暮らしの三本柱ではなく「命を守る優先順位」だと捉えています。
- 衣(体温を守ること)…赤ちゃんがまず布でくるまれるように、人間は衣によって体温を守る。
- 食(エネルギーの補給)…水や食料は続いて必要になるが、順序は衣の後。
- 住(安心できる場)…最後に住まいがあるからこそ、衣と食が安定する。
災害で全てを失ったとき、この順序を思い出すことが「生き延びるための道しるべ」になるのだと強調されました。
「アウトドア」と「防災」は表裏一体
東日本大震災をきっかけに、寒川さんは「もし自分が避難所生活を強いられたら?」と考え、アウトドアの道具や知恵がそのまま役立つことに気づいたそうです。
断熱マット、寝袋、テント、浄水器…。普段のキャンプで使う道具があれば、避難所での寒さやプライバシーの問題を軽減できることを実感しました。
また「防災用品」として市販されているもの全てが必ずしも実用的でない現実にも触れ、アウトドア用品の持つ耐久性や応用力を知り、防災商品を専業としている会社の話もありました。

車椅子でキャンプをする千葉さんの視点
今回のゲストは、障害を持ちながら車椅子でキャンプを楽しむ千葉さん。ご自身の体験から、災害時に直面する課題を率直に語ってくださいました。
特に強調されたのは 「排泄の問題」。避難所ではトイレまでの導線や多目的トイレの利用が難しいケースが多く、障害当事者にとっては命に直結する課題です。千葉さんは、必要な医療器具や薬を自分で準備する大切さを伝え、「助けてもらうことも防災の一部」だと語りました。
その上で、意外とキャンプはバリアフリーだというお話もありました。
避難所のバリアフリーには限界がありますが、キャンプはどのようにもカスタマイズできるので、トイレや寝床などを自由に自分仕様にバリアフリー化できます。
障害があっても日頃からアウトドアアクティビティを通して、いざという時の自分の暮らしに備えることができる。
千葉さんのキャンプをしたいという思いが、気づくと防災になっていた。それも暮らしに溶け込んだ防災の一つの形かもしれません。
防災のゴールは「ハッピーな暮らし」
「防災は目的ではなく、楽しく暮らすための手段」と寒川さん。
防災訓練のように“苦しいことをやらされる”イメージではなく、日常の遊びやアウトドアの工夫を通じて自然に備えが身につくことが理想だと話されました。
最後に紹介されたのは「三の法則」。
- 3分:呼吸ができなければ人は生きられない。
- 3時間:体温を守らなければ命が危うい。
- 3日:水がなければ生存は難しい。
- 30日:食料がなければ生きられない。
このシンプルな考え方が、災害時の行動を整理する助けになるのです。

参加者との対話から広がる気づき
参加者からは「高齢の親をどう守るか」「自治会での共助の仕組みづくり」「排泄を含めた優先順位」など、具体的な課題が数多く共有されました。千葉さんの言葉を受けて、「声をかけるだけでもつながりになる」「友達になる理由は防災にもつながる」という気づきも生まれました。
次回は「衣(服装と体温の守り方)」をテーマに開催予定です。
「防災=備蓄や訓練」だけではなく、「暮らしを楽しむ工夫」から始める視点に興味のある方は、ぜひ足を運んでみてください。

■寒川一プロフィール
アウトドアライフアドバイザー。アウトドアでのガイド・指導はもちろん、メーカーのアドバイザー活動や、テレビ・ラジオ・雑誌といったメディア出演など、幅広く活躍中。とくに北欧のアウトドアカルチャーに詳しい。東日本大震災や自身の避難経験を経て、災害時に役立つキャンプ道具の使い方・スキルを教える活動を積極的に行っている。
著書に『新時代の防災術』『「サボる」防災で生きる』『これからのキャンプの教科書』他

さんがわ せつこ
アウトドアの知恵を生かした災害時にも役立つ料理をメディアやワークショップなどで伝える。北欧の暮らしのエッセンスをレシピにも取り入れている。

この「かまくら暮らしの防災術」では生活に溶け込む防災の様々な座学や実践を半年間掛けて行なっていきます。興味あるものから無理なく参加できる。参加者同士がつながっていけることを大切に、いつか来るその時に繋がるというモットーで開催しています。
予定しているイベント一覧
①それぞれの備えを考えよう(個人の必要なものに焦点をあて、非常時持ち出しパックをつくる)
②アウトドア防災の可能性(衣食住、オフグリッド、生きる優先順位などを学ぶ)
③体温をどう守るか(レイヤードシステム、寝袋、マットなど学ぶ)
④アイデア防災クッキング1(実用性のある防災料理をつくる)
⑤水の確保(水の知識、浄水器の正しい使い方などを学ぶ)
⑥安全に火を取り扱う(安全な火おこし、焚き火、有用な火器の取り扱うをフィールドで学ぶ)※
⑦アイデア防災クッキング2(実用性のある防災料理をつくる)
⑧トイレ問題(使い捨てトイレ各種実験、衛生問題を語り合う)
⑨楽しいロープワーク(日常で実用性の高いロープワークを学ぶ)
⑩シェルターづくり(ロープ、シートで森でシェルターをつくってみる)※
⑪鎌倉の地形を学ぶ(ハザードマップや等高線などから鎌倉独自の地形を学ぶ)
⑫役立つ防災アイデア(日常の小さなアイデアからキャンプにも役立つアイデアまで、みなで共有しましょう)
受付担当:上岡 kamioka@kamakura-fudousan.com


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