【2】人生初のマラソン大会で思い出した感覚

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人生初のマラソン大会に参加した。

参加したのは「第20回湘南国際マラソン」。

スタート地点は、大磯ロングビーチ。
湘南の海を横に見ながら、通行止めになった高速道路(西湘バイパス)の上を走る、なかなか爽快なコースだ。

マラソンが初めての私は、ハーフより短い10kmの部にエントリーした。

今年は体を動かす機会がめっきり減り、体力も気力も食欲も落ちやすくなっていた。
「何か目標をひとつ決めれば、動けるかもしれない。」
そう思って申し込んだのが、このマラソンだった。

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朝日を見ながら会場へ。

思えば、スポーツが大好きだった子ども時代、
唯一苦手だったのがマラソンだった。

海の近い学校だったこともあり、いつも砂浜を走らされていて、
砂に足を取られてうまく走れないあの感覚が、どうしても好きになれなかった。

それでも負けず嫌いの私は、
「女子で3番以内に入る」と勝手に決めていて、
マラソン=血の味がする記憶になっていた。


マラソンに限らず、あの頃の私は、
自分の声を無視して“がんばる”ことでなんとかやりくりしていた気がする。

その積み重ねが20代を過ぎる頃には限界に達し、
「もうツラいことは何もしたくない」という状態がデフォルトになっていった。

「やってみたい」よりも「やって傷つきたくない」。
そんな気持ちが、自分自身を分からなくさせていたんだと思う。

だから「マラソンなんて絶対にやらない」と思っていた。

目標として春に申し込んだはずなのに、
夏は暑さを、秋は忙しさを理由に、
結局一度も練習をしなかった。

郵送されたゼッケンを開いたのは当日の朝。
自分自身の“拒絶する力”に半ば呆れつつ、
いざ会場に向かってみると、少しずつわくわくしている自分がいた。

強迫観念や計画性を失った代わりに、
「なんとかなりそう」と思えるようになったことは、もしかしたら今の私の強みなのかもしれない。

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参加賞のTシャツ。
半袖のつもりが、間違えて
ノースリーブを注文してしまい、凹む始末。

朝9時50分。
気づけばスタート地点に立っていた。

走りはじめると、久しぶりに動かしたおもちゃみたいな歓びが、小さく生まれた。
あんなに走りたくなかったのに、今は足を止めたくない。

もう昔みたいに順位を気にするより、
自分のからだと対話しながら進むほうが楽しい。


2kmを過ぎたあたりから急に体が軽くなり、
3km、4km、気づけばあっという間に折り返し地点にやってきた。

沿道の声援の「がんばれ!」という言葉を聞きながら、
かつてはその言葉がつらく感じられた時期のことを思い出した。
同じ言葉でも、受け取る意味はこんなに変わるのだと思った。

体の感覚を感じているのは自分ひとりだけれど、
不思議と“1人で走っている”感じはしなかった。

参加人数は1万9千人。
東日本大震災の死者・行方不明者が2万2千人だと聞き、
「こんなにたくさんの人が被害に遭われたんだ」と目の前の景色と、数字の持つ重さが重なって見えたりもした。

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どこまでも続く人の列。


走る前は寒くて脱ぎたくなかった上着も、いらないほどのからだの熱さ。(ノースリーブで結果オーライ)

太陽の光を背に、冬の風が体をすり抜けていくのが心地よかった。


ラスト1km。
最後の下り坂で周りがスピードを上げる中、
つい無理したくなる気持ちを抑えて、膝に負荷をかけないように走る。

そのおかげか、最後の上り坂に差し掛かってもスピードは落ちず、
むしろ体がどんどん軽くなっていった。

最後はヘトヘトになるだろうと思っていたのに、血の味もしない。

そのままゴールを駆け抜けたときの感覚は、
静かだけれど、確かな高揚感だった。

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時差スタートで、記録は1時間18分。
はじめてだから自己ベスト笑

フルマラソンやハーフを走っている人と比べたら、大したことではないけれど、
自分の中に眠っていた何かを思い出す、とてもいい経験だった。


「からだを動かすこと」
「自分を信じてやってみること」
それは、生きる喜びそのものだと思った。


今朝起きたら、二の腕と膝が少し痛い。
10kmはぶっつけ本番でもどうにかなったけれど、
日頃からからだを動かすことも、
自分を大切にすることなんだと思った。


ゆっくりでも、また走ってみたい。
そんな小さな気持ちが、今日は心のどこかで息をしている。

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この記事を書いた人

鎌倉市在住のイラストレーター・アーティスト。
日常の延長にある人の営みや思いを、手描きのやわらかな線で描いています。
挿画やポスターなどのクライアントワークを軸に、展示や地域イベントなど、街や人と地続きの制作を大切にしています。

鎌倉で過ごす好きな時間は、さんぽをすることと、昼寝ポイントを見つけること。

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