【後編】つくることで、人は回復する
― ファブラボ鎌倉・渡辺ゆうかさんの原点と、これからの学びのかたち
▶ 前編のあらすじ
前編では、鎌倉FMのラジオ番組 みんなのアカデミア にて、
ファブラボ鎌倉 代表・渡辺ゆうかさんが語った、
- ファブラボ鎌倉が生まれた背景
- 世代や立場を越えて人が混ざる「場」としての価値
- 鎌倉という土地とファブシティの思想
についてご紹介しました。
後編ではさらに一歩踏み込み、
渡辺ゆうかさん自身の人生と、ファブラボがどう結びついてきたのか、
そして、これからの学び・居場所・未来像について語られます。
海外、挫折、事故――点だった経験が、線になるまで
渡辺さんの原点は、高校卒業後に渡ったアメリカでの経験にあります。
多国籍・多様な背景を持つ人々が学ぶコミュニティカレッジ。
「“英語を学びに来た”と言ったら、
それは目的じゃない、と言われたんです」
その言葉をきっかけに、
「自分は何を学びたいのか」「何をしたいのか」を問い続ける時間が始まります。
帰国後、ほぼゼロから美大受験に挑戦。
多摩美術大学で環境デザインを学び、
「空間が人に与える影響」への関心を深めていきます。
そして社会人になった直後、交通事故。
車椅子での生活、外に出られない日々。
そこで初めて実感したのが、
テクノロジーによる“学びの自由”でした。
「学校に行かなくても、
人は学び続けられるんだ、と気づいた」
この体験が、後のファブラボ鎌倉の思想に
深くつながっていきます。
「マシンの場所」ではなく「人の居場所」へ
ファブラボとの出会いは、
「クリエイターの新しい働き方はないか?」
という問いからでした。
当初、渡辺さん自身は
“ファブラボをつくる側”になるとは思っていなかったといいます。
しかし、
- ものづくり
- 学び
- テクノロジー
- コミュニティ
それらが一つの空間で交わる可能性に気づき、
2011年、ファブラボ鎌倉の立ち上げに関わります。
ここで大切にされてきたのは、
「誰のための場所か」を常に問い続けること。
- 学校に馴染めない子どもたち
- 社会から一度離れた大人
- 何かを始めたいけれど、きっかけがない人
ファブラボ鎌倉は、
“成果を出す場所”ではなく、
自信を取り戻すための場所として育ってきました。
中高生と社会をつなぐ「ファブクエスト」
後編で語られた大きな取り組みの一つが、
中高生向けプログラム「ファブクエスト」。
テーマは
「鎌倉の課題を、テクノロジーで解決する」。
半年間、フィールドワーク・対話・制作を重ね、
最後は“つくったもの”を社会に向けて発表します。
「プレゼンがゴールじゃない。
実際に使ってもらい、改善するところまでやる」
鎌倉市長や大学教授、企業関係者の前で発表する経験は、
参加した中高生にとって大きな転機になっています。
もう一つの居場所「ファブリカ」
さらに、
「プログラムに参加する勇気すら持てない子たち」
へのアプローチとして生まれたのが、
二階堂の青少年会館で行われている
ファブリカという取り組み。
- ファッション × テクノロジー
- 音楽が流れる空間
- 正解のないものづくり
学校でも習い事でもない、
“ちょうどいい居場所”を意識した場づくりです。
「手を動かすと、
自分と現実の距離がちゃんと分かる」
頭で考えるだけではなく、
触れて、失敗して、やり直す。
そのプロセス自体が、心を整えていく。
これからのファブラボ鎌倉が目指すもの
渡辺さんが描く未来は、とても静かで力強いものです。
- 寺子屋のように開かれていて
- でも世界とつながっている
- 何歳でも、何度でも学び直せる
「蔵に入ると、
世界とつながる“出島”のような場所でありたい」
海外のファブラボ(バルセロナなど)では、
家や家具、エネルギーまで“自分たちでつくる”実践が進んでいます。
鎌倉から、そんな未来への回路が
少しずつ伸びていることを、この番組は教えてくれます。
ラジオで聴くからこそ、伝わるもの
この記事は、あくまで入口です。
渡辺ゆうかさんの
言葉の間、笑い、迷い、確信。
それは、文章だけでは伝えきれません。
みんなのアカデミアは、
「すごい人」を紹介する番組ではなく、
「問い続ける人」の声を届ける番組です。
鎌倉で何かを始めたい人。
学び直したい人。
居場所を探している人。
ぜひ、耳を傾けてみてください。
「みんなのアカデミア ~radio campus, sharing your story」
放送概要
放送局:鎌倉エフエム放送(82.8 MHz)
放送日時:毎週土曜日 14:00~14:30(第5週は休止)
ネット配信:JCBAインターネットサイマルラジオ
番組コンセプト
“ローカル コミュニティ・学び・未来”を軸に、多彩なゲストを迎え、2週にわたって深く語り合うトーク番組です。例えば、既に馴染んだ「SDGs」という言葉が浸透する前から、鎌倉には持続可能な社会を目指し、先駆的な活動を続ける方々がいらっしゃいます。そんな一人ひとりのストーリーが、リスナーに新たな「気づき」や「ひらめき」を届けます。この土地に根付いた風土を感じながら、午後のひとときを学び舎としてご一緒しませんか?

番組タイトル「みんなのアカデミア」は、終戦直後に開校し、4年半の歴史を刻んだ「鎌倉アカデミア」へのオマージュです。
ナビゲーター紹介
中溪 裕子(なかたに ゆうこ)
- 鎌倉生まれ。大学卒業後、ソニー株式会社にて広報・映像制作、エンターテインメントロボット「AIBO」のプロモーションを日本・米国にて担当。
- 現在はジャンルを越えたKOHO(広報+後方)支援および哲学・社会学分野のライターとして活動。
- 2012年より鎌倉エフエムのパーソナリティーを務め、「みんなのアカデミア」の案内役として活躍中。
番組へのご意見、ご感想をお待ちしています。
e-mail: msg@kamakurafm.co.jp
聴き方
- ラジオで聴く:82.8 MHz(鎌倉市、藤沢市、茅ヶ崎市、逗子市、葉山町、横浜市の一部など広域で聴取可能)
- インターネットで聴く:「今すぐ聴く!」ボタンから鎌倉エフエムにアクセス
- 放送日時:毎週土曜日 14:00~14:30(第5週は休止)

「みんなのアカデミア」は、“ローカル コミュニティ・学び・未来”をテーマに、中溪裕子さんが発信する鎌倉エフエムのラジオ番組です。多彩なゲストを迎え、2週にわたって深く語り合い、持続可能な社会を先駆けて実践してきた人々のストーリーを紹介します。一人一人のお話が、聴く人に新たな気づきやひらめきをもたらし、日常を見つめ直すきっかけとなるでしょう。番組名は戦後の文化教育拠点「鎌倉アカデミア」へのオマージュ。鎌倉の風土を感じながら、午後のひとときを学び舎としてご一緒しませんか?


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