「住み続けられる街」か?湘南エリア行政の意外と優れた「おサイフ事情」。

鎌倉・湘南・西湘エリアへの移住を考える際、多くの人が「海の近さ」や「街の雰囲気」を重視します。しかし、長く住み続けるために忘れていけないのは自治体の「経営力」です。

今回は、自力で街を運営する「不交付団体」の解説と、周辺自治体の「財政力指数」を比較し、このエリアの本当の安定感を探ります。

目次

1. 財政の自立を示す「不交付団体」とは?

日本の自治体のほとんどは、自分たちの税収だけでは足りず、国からの補助金(地方交付税)をもらって運営しています。

その中で、「自前の税収だけで行政サービスを賄える」と判断された極めて健全な自治体が「不交付団体」です。

令和7年度の算定において、このエリアで自立しているのは以下の4市町です。

  • 鎌倉市・藤沢市: 圧倒的な居住人気(個人市民税)とブランド力(固定資産税)による盤石の経営。
  • 寒川町: 圏央道周辺の物流・工業団地からの法人税が足固めしている街。
  • 箱根町: 宿泊施設などの固定資産税と、膨大な入湯税が支える、世界ブランドの観光地。

鎌倉・湘南・西湘付近で、自力で街を運営している「不交付団体(藤沢市・鎌倉市・寒川町・箱根町)」。 なぜこれらの街が財政的に健全なのか、そしてその「財政」が私たちの暮らしをどう具体的に支えているのか、それぞれの街の個性に注目して詳しく解説します。

1. 藤沢市:職・住・遊が揃う「自立型ハイブリッド都市」

藤沢市は人口44万人を超え、県内でも活気にあふれた自治体です。

  • 財政が健全なワケ: 「税収のバランス」が秀逸です。南部(江の島周辺)の観光収益、中部(藤沢・辻堂)の厚い現役世代による個人市民税、そして北部(桐原・下土棚など)の大規模工業団地からの法人税。この「三本の矢」があるため、特定の産業が不調でも街全体が揺るがないタフな構造になっています。
  • 暮らしの魅力: 「行政のスピード感と実行力」です。例えば、子ども医療費の18歳までの無償化を湘南エリアでいち早く(2023年)打ち出したのも藤沢市でした。財政に余裕があるため、テラスモール湘南周辺のような最先端の再開発と、昔ながらの鵠沼の住宅街のインフラ整備を同時に進められる実行力があります。

2. 鎌倉市:ブランドが守る「安定のストック経営」

鎌倉市は、景気に左右されにくい堅実な財政が特徴です。

  • 財政が健全なワケ: 最大の強みは「資産価値」です。古都としての景観が守られているため、土地の価値が下がりにくく、安定した固定資産税が入ります。また、高所得層の住民が多く、個人市民税の割合が非常に高いのも特徴。派手な公共事業よりも、現在の価値を「守る」ための経営が功を奏しています。
  • 暮らしの魅力: 「環境と文化への投資」です。古都保存法に基づく緑地の買い取りや、歴史的建造物の維持など、他の自治体では削られがちな「街の品格」を守る予算がしっかり確保されています。また、所得制限なしで中学校卒業まで医療費が無料など、ファミリー層への手厚い還元も「鎌倉プライド」の一つです。

3. 寒川町:戦略的に稼ぐ「知る人ぞ知る工業・物流の要」

湘南エリアで唯一の「町」としての不交付団体。まさに「小さくても強い」自治体です。

  • 財政が健全なワケ: 「立地の戦略的活用」です。圏央道の開通により物流拠点としての価値が爆発的に高まりました。内陸工業団地に多くの企業が集積しており、人口規模に対して法人からの税収が非常に大きいのが健全さの秘密。派手な観光施設を作らず、着実に稼ぐインフラに投資してきた結果です。
  • 暮らしの魅力: 「コストパフォーマンスの高い生活」です。財政が豊かなため、コミュニティバスの運行や公共施設の更新がスムーズ。平坦な地形で自転車移動がしやすく、家賃や土地代が周辺の市に比べて抑えめであるにもかかわらず、リッチな行政サービスが受けられる「穴場の強豪」です。

4. 箱根町:世界に誇る「観光経営のプロフェッショナル」

人口約1万人に対して、財政規模は全国トップクラスの別格な町です。

  • 財政が健全なワケ: 「圧倒的な外貨獲得能力」です。日本を代表する旅館・ホテルが建ち並び、そこからの固定資産税と、宿泊者が支払う入湯税が莫大な金額に上ります。さらに、高所得層の別荘も多く、そこからの税収も街を支えています。
  • 暮らしの魅力: 「充実したインフラと福祉」です。観光客を迎えるために道路や公園が常に美しく整備されており、住民もその恩恵を受けられます。また、独自の教育支援や少人数教育など、豊富な財源があるからこそできる「町民一人ひとりへの手厚いケア」が、住む人にとって嬉しいですね。

2. 周辺市町の「財政力指数」をチェック!

「財政力指数」とは、1.0に近い(または超える)ほど、その街にお金があることを示します。湘南・西湘エリアの各自治体を比較してみましょう。

市町村名財政力指数(目安)特徴・暮らしへの視点
藤沢市1.11【不交付】 県内屈指の安定感。現役世代が多く活気がある。
鎌倉市1.10【不交付】 地価が下がりにくく、景気に左右されない強さ。
箱根町1.08【不交付】 人口1万人に対し圧倒的な税収。インフラが手厚い。
寒川町1.04【不交付】 派手さはないが、法人税収が極めて安定。
逗子市0.89良好。良質な住宅地による個人市民税が支柱。
葉山町0.85良好。高所得層が多く、町単独でも高い水準を維持。
平塚市0.89交付団体だが、工業・商業のバランスが良く、基盤は強い。
小田原市0.77西湘の中核都市。広域的な行政サービスの負担がある。
茅ヶ崎市0.88居住人気が高く、横浜(0.89)と同水準の安定感。
大磯町0.75住宅地としての価値は高いが、今後の活性化が鍵。
横須賀市0.71人口減少対策が課題だが、観光・防衛の独自拠点。
二宮町0.61コンパクトな町。今後の街づくりに注目。
湯河原町0.60観光資源はあるが、人口減少の影響を受けやすい。
三浦市0.45観光・漁業が主。財政は厳しく、周辺との連携が重要。
真鶴町0.44小規模自治体特有の厳しさがあり、独自の工夫が必要。

3. 財政力が「私たちの暮らし」にどう響くのか?

「市町村にお金がある」ことは、単なる数字の話ではありません。

  1. 子育て・教育の独自ルール:不交付団体や指数が高い街は、医療費の助成対象を広げたり、学校のエアコン設置や給食費の補助を独自に強化したりする傾向があります。
  2. インフラのメンテナンス:将来、道路が傷んだり水道管が古くなったりした際、財政に余裕があれば、住民負担(水道料金の値上げなど)を抑えつつ迅速に更新できます。
  3. 地価(リセールバリュー):行政が安定し、公共施設が綺麗な街には人が集まります。それが結果として、あなたの家の価値を守ることに繋がります。

結び:街を「経営」の視点で選んでみる

財政力指数の「その先」へ

財政力指数が高いことは確かに一つの安心材料ですが、それだけで街のすべてが決まるわけではありません。住まい探しにおいて本当に大切なのは、「その町の行政が、自分たちの暮らしを支え続けられるか」です。

  1. 「貯金(基金)」と「借金(公債)」のバランス 指数が1.0以下でも、将来のために計画的に借金を返し、災害に備えてしっかり貯金している「堅実な経営」の街もあります。
  2. 変化に対応できる「柔軟性」 今は盤石でも、特定の企業や観光の税収に依存しすぎていたり、急激な高齢化への備えができていなかったりすると、将来のサービス維持が難しくなることもあります。
  3. 「何にお金を使っているか」という意志 インフラ整備に力を入れる街、教育を無償化する街、自然を守る街。街の会計(予算)は、その街から住民へのメッセージです。

鎌倉ひとはこからのメッセージ

「この街が好き」という気持ちは、とても大切です。
自分にできることを考えて行動することで、街はもっと強く、魅力的になります。

一方で、「この街の経営(財政)は大丈夫か?」という視点も大切です。
その街の財政がしっかりしていれば、住まいはただの不動産ではなく、将来にわたって価値を保てる「資産」になります。

私たちが暮らす鎌倉・湘南・西湘エリア。
その美しさを支える“街の体力”についても、ぜひ一緒に考えてみませんか。

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この記事を書いた人

こんにちは、上岡洋一郎です。
鎌倉生まれ育ちの36歳、ハウスメーカー営業、不動産投資会社を経て、不動産屋さんをやっています。不動産を通してこの地域がもっとワクワクできないか、いつも模索しています。

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