家を買ったときと同じように、家を手放すときにも準備が必要です。
特に、古い家や土地が受け継がれてきた鎌倉・湘南では、売却・相続の検討が人生の節目と重なるケースがよくあります。
そんなタイミングで多くの方が感じる不安が、税金がどうなるのかということ。
- 「親の家を相続したら税金はかかるの?」
- 「昔買った家、今売ると価値が上がってるけど…どれだけ税金が必要?」
こうした疑問に答えるうえで、まず押さえておきたいのが次の3つです。
① 譲渡所得税(売却時)
② 3,000万円特別控除(マイホーム売却時の特例)
③ 相続税(引き継ぐとき)
鎌倉・湘南は地価が落ちにくく、海側や駅徒歩圏では評価額が高いこともあるため、全国平均とは少し状況が異なる場合があります。
ここでは、難しい計算よりも、「どの場面で関係する税金なのか」に絞ってまとめます。
1|売却時に検討する「譲渡所得税」

土地や建物を売却し、売却額が購入時より高くなった場合、その差額が「利益(=譲渡所得)」として扱われ、譲渡所得税の対象になることがあります。
反対に、利益が出ない売却であれば、課税対象にならない場合もあります。まずはこの前提を押さえることが大切です。
鎌倉・藤沢・逗子・葉山など、いわゆる「湘南エリア」は、海沿い・駅近・住宅地としての需要が高く、購入時より高く売れたケースが起こりやすい地域とされることから、売却前に税金の確認を行う人が多い傾向があります。
譲渡所得は、次の式で計算されます:
売却額 −(取得費+譲渡費用)− 控除がある場合はその額 = 課税対象額
取得費には購入代金のほか、仲介手数料や建物の減価償却分が含まれ、売却時の仲介手数料や測量費など、売却に直接必要だった費用も控除できます。
なお、取得費の資料が残っていない場合、売却額の5%を取得費として計算できる制度もあります。
また、所有期間によって税率が変わります。
売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えている場合は「長期譲渡所得」となり、5年以下の場合は「短期譲渡所得」として扱われます。
| 区分 | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|
| 長期(所有期間5年超) | 15% | 5% |
| 短期(所有期間5年以下) | 30% | 9% |
※このほか、所得税には復興特別所得税が加算されます。
さらに、実際に住んでいた家(居住用財産、いわゆるマイホーム)を売却した場合、状況によっては最大3,000万円の控除や税率の軽減措置など、税額が変動する制度が利用できることがあります。要件に当てはまるかどうかで税額が大きく変わるため、確認が必要です。
鎌倉・湘南の不動産売却では、「利益が出る可能性を前提に検討する」ケースが増えています。売却を検討するタイミングで、利益が発生するのか、課税対象になるのか、どの特例が利用できるのかを整理しておくことで、売却計画がより明確になります。
参考:国税庁 土地や建物を売った時
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_3.htm
2|マイホーム売却なら検討したい「3,000万円特別控除」

自分や家族が住んでいた家を売却する場合、条件を満たすと譲渡益から最大3,000万円まで差し引ける制度(3,000万円特別控除)を使えることがあります。売却額が購入時より高くなっても、この控除により課税対象額が小さくなり、結果として税金がかからないケースもあります。
たとえば、土地評価が比較的高い傾向にある鎌倉・藤沢・逗子・葉山といった湘南エリアでは、「売却益が発生しやすい」という背景から、この控除が検討材料になることがあります。
この制度を利用できる可能性があるのは、居住していた家屋や過去に住んでいた住宅とその敷地の売却など、一定の条件に当てはまる場合です。
また、住まなくなってから売却する場合でも、期限が決められているケースがあります(例:住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日まで など)。
一方で、以下のような状況では適用対象外になる場合があります。
- 一時的な仮住まいだった家
- 別荘など居住目的以外の用途で所有していた建物
- 親族など「特別の関係がある相手」へ売却した場合 など
また、この制度はほかの特例と併用できない場合があります。たとえば、住宅ローン控除や買換え特例などと同時に使えない条件が設定されているケースがあるため、売却の前に整理しておくことが大切です。
もうひとつ忘れやすいポイントがあります。
税額が0円になる場合でも、制度を使用するには確定申告が必要です。申告を行わない場合、この控除が適用されず、後から税額が発生することがあります。
湘南・鎌倉では、「売却後に制度を知り、慌てて確認する」ケースも見られます。売却時期や状況によって判断が分かれるため、売却の検討段階で、制度が適用できるかどうかを確認しておくと安心です。
参考:国税庁 マイホームを売った時の特例
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
3|実家を受け継ぐときに考える「相続税」

親御さんの家や土地を引き継ぐときに関係してくるのが相続税です。
相続税は、亡くなった方から相続や遺贈によって取得した財産の合計額が、一定のライン(基礎控除額)を超えた場合に課税対象になります。
基礎控除額は、国税庁の基準では次のように計算されます。
3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)
この基礎控除額を超える「正味の遺産額」があると、相続税がかかる可能性があります。
正味の遺産額は、おおまかにいうと、
- 相続や遺贈で受け継いだ財産の合計(不動産・預貯金など)
- + 生前贈与の一部(一定期間内のもの)
- - 債務(借入金など)・葬式費用
- - 非課税財産(墓所や仏壇のほか、生命保険金・死亡退職金のうち「500万円 × 法定相続人の数」までの部分 など)
といった要素を整理して算出します。
不動産については、
- 土地:路線価や倍率方式を用いた評価
- 建物:固定資産税評価額をベースにした評価
といった方法で「相続税評価額」が決まります。実勢価格とは異なりますが、鎌倉・湘南エリアのように地価水準が比較的高い地域では、建物が古くても土地だけで一定の評価額になることがあります。
そのため、
- 鎌倉市内の住宅地
- 湘南エリアの海沿いの土地
- 駅近マンションの敷地権付き住戸
などでは、「思っていたより評価額が高く、基礎控除額を超えるケース」が出てくる可能性があります。
実家の土地・建物の評価額や、預貯金・保険金などを合わせたときにどのくらいの規模になるのかを一度把握しておくことが、相続対策の出発点です。
そのうえで、具体的な課税の有無や節税の検討については、税務署や税理士等に相談しながら進めると安心です。
参考:国税庁 財産を相続したとき
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_5.htm
まとめ|出口戦略は「正しく知ること」から始まる

鎌倉・湘南の家は、景色や環境、人との暮らしの記憶が積み重なっている分、「どう扱うか」の判断に迷いやすいテーマでもあります。
ただ、
- 売却に関わる「譲渡所得税」
- マイホーム売却時の「3,000万円特別控除」
- 実家を受け継ぐときの「相続税(基礎控除の考え方や土地評価)」
といった基本的な制度の枠組みを知っておくことで、感情だけでなく「数字」と「仕組み」からも選択肢を整理しやすくなります。
- 売るのか
- 相続して保有するのか
- 賃貸や二拠点居住など「活用して残す」のか
- いったん結論を出さず、様子を見るのか
どれか一つが正解というよりも、暮らし方や家族構成、資産状況に照らして、納得できる形を選ぶことが大切です。
鎌倉・湘南らしい暮らしの価値と、お金や制度の側面を両方意識しながら、自分たちに合ったペースで考えていくことがポイントと言えます。


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