こんにちは、鎌倉ひとはこの上岡です。 年が明け、空気が澄み渡る季節となりましたが、連日の乾燥による火災のニュースも気になる時期ですね。
1月某日、第9回目となる「かまくら暮らしの防災術」を開催しました。 今回のテーマは、防災スキルの基本にして奥義、「ロープワーク」です。
講師は、アウトドアライフアドバイザーの寒川(さむかわ)さん。 今回は、茅ヶ崎や横浜など市内外から、「ロープワークはYouTubeを見てできたつもりになっていたけれど、実践として身につけたい」という意識の高い方々が集まりました。
現代における「便利」と「結び」の関係

講座の冒頭、寒川さんからハッとするような問いかけがありました。 「現代の生活の中に、ロープってあんまりないですよね?」
確かに、私たちの身の回りにはマジックテープやファスナーがあふれ、「結ぶ」という行為自体が減っています。
寒川さんはこう語ります。 「今の多くの人が言う『便利』は、手足を動かさない、考えなくていい『楽』のこと。でも本来の『便利』とは、より大きな効果が得られることだったはずです」
ロープワークは、決して「楽」をするための技術ではありません。しかし、たった一本のロープと知恵があれば、物を固定し、空間を作り、時には命を救うこともできる。これこそが、生きるための本当の「便利」なのです。
良いロープの選び方と「パラコード」の秘密
ホームセンターには様々なロープが並んでいますが、選び方のポイントは「中身が詰まっているか」そして「触った感触」だそうです。
- 指で転がして確認: 指先で転がしたときに、綺麗な円形を保てるもの(中身が詰まっているもの)が良いロープ。ペチャっと潰れてしまう「平ロープ」は、結び目が解きにくく、扱いづらいそうです。
- 長さの黄金比: 市販の15mや30mのロープはそのままでは長すぎて扱いづらいもの。寒川さんのおすすめは「7.5m」。15mを半分に切ったこの長さが、一番取り回しが良いとのことでした。
知っていましたか?パラコードの中身
今回練習に使った「パラコード(パラシュートコード)」。実はその名の通り、元々はパラシュートを吊るすための強靭なロープです。 寒川さんがロープの断面を見せてくれました。外側のナイロンの鞘の中に、細い糸が何本も入っています。
「もしもの時は、この中の糸を引き抜いて、縫い糸や細かい修理に使うこともできるんです」
ただ結ぶだけでなく、分解して素材としても使える。まさに多機能な防災ツールです。
これだけ覚えれば無敵!基本の4つの結び
約4,000種類あると言われる結びの中から、今回徹底的に練習したのはこの4つ。これさえできれば、キャンプでも災害時でも「できる人」になれます。

1. ふた結び(ツー・ハーフ・ヒッチ)
「結びの基本中の基本」です。木や柱に対象物を結びつける時に使います。 シンプルですが、しっかり締め込むことができ、解くのも簡単。ただし、動けば動くほど締まっていく結び方なので、自分の体や動物には絶対に使ってはいけません(肋骨が折れてしまいます!)。
2. 自在結び(トートライン・ヒッチ)
テントやタープを張る際、金具(自在金具)がなくてもロープの張りを調整できる結び方です。 「ロープを一度内側に巻き込んで…」と最初は皆さん苦戦していましたが、理屈がわかると「おお!本当に長さが調整できる!」と感動の声が上がりました。
3. もやい結び(ボウライン・ノット)
「結びの王様」と呼ばれる、船乗りにとってはおなじみの結び方。 特徴は、強い力がかかっても結び目の輪の大きさが変わらず、かつ、解きたい時には簡単に解けること。人命救助で体にロープを巻く時は、締まっていかないこの結び方が鉄則です。 今回は、片手で自分の体に結ぶ「自分もやい」にも挑戦しました。
4. 本結び(スクエア・ノット)
2本のロープを繋ぐ時の基本です。 注意点は、右を上に重ねたら次は左を上にすること。順序を間違えると「縦結び(女結び)」になり、強度が落ちてすぐに解けてしまいます。防災の現場では命取りになるため、正しい形を何度も確認しました。

道具への愛着は「メンテナンス」から
最後に、ロープの保管方法についても教わりました。 ナイロンやポリエステルのロープは紫外線(日光)が大敵。外に放置すると劣化して強度が落ちてしまいます。
- 洗い方: 汚れがひどい時は水洗い(洗濯機は絡まるのでNG!)
- 干し方: 必ず陰干しで
- しまい方: 親指と小指を使って八の字に巻き、次に使う時にスルスルと解けるように。
「道具を美しく使うことも防災術の一つ」という言葉が印象的でした。

次回は実践編!「シェルターづくり」
頭では理解していても、いざ手を動かすとなると難しいロープワーク。 「知識」を「技術」に変えるには、お家での反復練習あるのみです。テレビを見ながら指が勝手に動くくらいまで練習しましょう!
さて、次回はこのロープワークを実際のフィールドで活用します。
【次回予告】ロープワーク応用で屋外でのシェルターづくりを学びます




今回学んだ結びを駆使して、森の木々とブルーシートだけで、雨風をしのぐシェルター(隠れ家)を作ります。
- 日時: 1月31日(土)
- 場所: (いつものフィールド)
- 持ち物:
- 動きやすい服装、軍手
- マイロープ(お持ちの方)
- ブルーシート(推奨サイズ:1.8m × 2.7m、厚手 #3000番) ※あまり大きすぎると一人で張るのが大変なので、このサイズが扱いやすくおすすめです。
今回ロープワークに参加できなかった方も、現場でサポートしますのでぜひご参加ください。 自分の手で「守られる空間」を作る体験、一緒に楽しみましょう!
アウトドアライフアドバイザー 寒川ご夫妻のご紹介
寒川一さん

アウトドアライフアドバイザー。アウトドアでのガイド・指導はもちろん、メーカーのアドバイザー活動や、テレビ・ラジオ・雑誌といったメディア出演など、幅広く活躍中。とくに北欧のアウトドアカルチャーに詳しい。東日本大震災や自身の避難経験を経て、災害時に役立つキャンプ道具の使い方・スキルを教える活動を積極的に行っている。
著書に『新時代の防災術』『「サボる」防災で生きる』『これからのキャンプの教科書』他
寒川せつこ さん
アウトドアの知恵を生かした災害時にも役立つ料理をメディアやワークショップなどで伝える。北欧の暮らしのエッセンスをレシピにも取り入れている。


今後開催予定のイベント
⑨楽しいロープワーク(日常で実用性の高いロープワークを学ぶ)
⑩シェルターづくり(ロープ、シートで森でシェルターをつくってみる)※
⑪鎌倉の地形を学ぶ(ハザードマップや等高線などから鎌倉独自の地形を学ぶ)
⑫役立つ防災アイデア(日常の小さなアイデアからキャンプにも役立つアイデアまで、みなで共有しましょう)
参加者の方の声
鎌倉市在住 Yさん
必ず来る自然災害。その時に大切なのは「自分や家族を守り抜くスキル」があればと受講しました。
「起こらないだろう」という正常性バイアスにとらわれず、自助の力としてのアウトドア防災を身につけておくこと。
それは周囲に依存せず、迷惑を最小限にとどめる備えと考えて参加し続けています。
逗子市在住 Iさん
防災用に買った浄水器を使わずにいたけれど、鎌倉の湧水ワークショップを知り関心が高まりました。監修は焚き火カフェの寒川さん。インスタで見つけた防災講座に1月から参加し、毎回新しい発見があります。いつか自分の体験をもとに、防災ワークショップの輪を広げていきたいと思っています。
鎌倉市在住 Sさん
防災という非日常を意識する行為をいかに日常に溶け込ませるか、という点に意識を置かれている講座です。 各回それぞれの学びがとても深いのももちろんですが、連続して参加することにより、定期的に防災について考える機会ができ、意識が自然と高まる事が他の講座にはない魅力だと思います。いつでもどなたでも参加できます!
暮らしの防災コラム
- 第1回「正解のない防災を自分ごとで考える」
- 第2回「助けてもうらことも防災」
- 第3回「寒さは命に関わる」
- 第4回「食から考える防災」
- 第5回「住んでいる街や自然を知ること」
- 第6回「サプライズの気持ちを忘れずに」
- 第7回「火を学ぶ、火と暮らす」
- 第8回「トイレから考え直す防災」
これまでの取り組みやイベント情報を知りたい方は、かまくら暮らしの防災術Facebookグループ『日日是防災』にぜひご参加ください!



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