【特集】“プラスチックを食べる微生物”が、鎌倉から地球を救う?
― 循環創造学セミナー 第1回より 慶應義塾大学・宮本憲二教授のお話 ―
「10年後の未来を想像できますか?」
そう問いかけるのは、鎌倉から“循環”の在り方を発信する「循環創造学セミナー」。
記念すべき第1回(2023年4月28日)のテーマは、なんと――
「プラスチックを食べる微生物で地球を救う」。
司会を務めたのは、「ゴミフェスコミュニティ」の平野理恵さん。
ゲストは、慶應義塾大学理工学部の宮本憲二教授。
お二人の軽やかなやり取りの中で、「環境問題」という硬いテーマがぐっと私たちの日常に近づいていきます。
■ 鎌倉の循環は、すでに始まっている
冒頭では、鎌倉市のごみ分別の話題から。
鎌倉市は、人口10万人以上50万人未満の自治体の中で資源化率全国1位(52.7%)という快挙を誇ります。
市民が丁寧に分けたミックスペーパーはトイレットペーパーに、古着は糸に再生され、
「分けて集めれば、ごみは資源になる」という言葉を、鎌倉は実践しています。
「分別の先に“出口”が見えることが大切」と平野さん。
こうした小さな循環が、やがて大きな社会の仕組みを変えていくのかもしれません。
■ 微生物は“地球の見えない仲間”
宮本先生の話は、誰もが一度は聞いたことのある「微生物」から始まります。
顕微鏡でしか見えない小さな生命たちは、私たちの体の中にも、街のあらゆる場所にも存在し、
“見えないところで世界を支えている”。
悪者扱いされがちなバクテリアも、実は納豆を発酵させ、腸内環境を整え、
「地球の健康」を保つ縁の下の力持ちなのです。
そんな微生物の中に――プラスチックを食べる種類が存在する。
にわかには信じがたい話ですが、研究は現実に進んでいます。
■ プラスチックの海と、見えない危機
私たちの海には、年間1300万トンのプラスチックごみが流れ出しています。
やがてそれは太陽光や波に削られ、“マイクロプラスチック”となり、
魚の体に、そして私たちの食卓に戻ってくる。
「人間はすでに、年間250gのプラスチックを口にしている」
――そんな報告に、会場は静まりかえります。
やがて海の中のプラスチックの量が魚と同じになる、という2050年の予測。
遠い未来ではなく、もう目の前の話です。
■ 「地球に帰るストロー」実験、鎌倉の小学生と
そんな現実の中で、宮本先生たちは希望の研究を進めています。
西鎌倉小学校の6年生たちと一緒に行われた「地球に帰るストロープロジェクト」。
子どもたちが給食で使ったストローを土に埋め、
そこに微生物がどのように作用するのかを観察しました。
1か月後、表面はボロボロに。
分析の結果、ストローを分解する新しい微生物の存在が確認されたのです。
もし新種であれば、鎌倉にちなんだ名前を――
そんな夢のような約束に、教室いっぱいの笑顔が生まれました。
■ “使い捨て”をどう循環させるか
講演の終盤では、鎌倉市長や教育長からも質問が寄せられました。
「生分解性プラスチックは、どんな分野で使われるべきか?」
宮本先生の答えは明快でした。
「すべてを置き換えるのは難しい。けれど、“使い捨て”から変えていくことはできる。」
冷蔵庫の外側のプラスチックが数ヶ月で分解しては困るけれど、
一度使って捨てるフォークや袋なら、消えて土に還る方がいい。
「使い分け」と「循環」――そのバランスこそが次の時代の鍵です。
■ 10年後の地球に、どんな循環を残せるだろう
「循環創造学セミナー」は、毎月、慶應義塾大学や鎌倉の研究者が登壇し、
“未来の循環社会”をテーマに語る連続シリーズ。
今回の宮本先生の講演は、その幕開けにふさわしい“希望の種”でした。
地球を救うのは、誰かひとりの科学者ではなく、
私たち一人ひとりの小さな選択――「分ける」「減らす」「知る」。
その積み重ねが、見えない微生物たちと共に、
静かに未来を変えていくのかもしれません。
📺 次回予告
次回(第2回)は、慶應義塾大学・田中裕也先生をゲストに迎え、
「街を3Dプリントする」という驚きのテーマでお届け予定。
「循環」が“ものづくり”の未来にどうつながるのか。
続編もお楽しみに!




コメント