鎌倉のひとに学びつながる
「鎌倉のひとに学びつながる」は、鎌倉で暮らし、働き、想いをもって活動する人々を紹介するインタビューシリーズです。
市民が市民にインタビューすることで、地域に根ざした“学び”や“つながり”を見つめていく──。
日常の中にある小さな気づきや、誰かの生き方から、私たち自身のヒントを探していきます。

手描きの線がつなぐ、人と人
今回のゲストは、イラストレーター・アーティストの ほりはる さん。
手描きの柔らかな線で、人と人がつながるきっかけを届けたいと活動しています。
Instagramやイベント出展などを通じて、鎌倉の日常や人々の姿を温かく描き続ける作家です。
「手描きの線は、人と人をやさしくつなぐ“通い路”のようなもの。
描くことで、世界と自分をつなぐ感覚があるんです。」
「描くのが怖くなった」時期を越えて
絵を描くことを意識的に再開したのは、2020年。
子どもの頃は絵を描くことが大好きだったものの、大人になるにつれ「描くのが怖くなってしまった」と語るほりはるさん。
「上手だねって言われるうちに、“うまく描かなきゃ”が自分の基準になってしまって、
素直に楽しむことができなくなっていたんです。」

「怖いけど、その先に何かがある気がする」
そんな思いから再び筆をとり、始めたのが絵日記でした。
誰に見せるでもなく、自分との対話として描く日々。
それはいつしか、閉じていた心を少しずつ開いていく“治療の時間”になっていきました。
絵日記が教えてくれた「今を生きること」
コロナ禍の静かな日常の中で、
「過去でも未来でもなく、“今”に目を向けよう」と決めたほりはるさん。
家で作ったごはん、読んだ本の感想。
そんな小さな日常を描き続けるうちに、
「描くのが楽しいから、描きたくなる日常を過ごそう」と思うようになったといいます。
「行動が変わりました。
家の中だけでなく、町へ出て、鎌倉の景色や人との出会いを描くようになりました。」
絵日記はいつしか“生き方の地図”になり、
自分の中の希望の光を少しずつ見つける時間となっていきました。
「描く」ことは自分を取り戻すこと
「あの時間は“治療”だったと思います。
描かずにいられなかったのは、自分を取り戻すための時間でした。」
10年ほど人との関わりが怖く、電車にも乗れなかった時期を経て、
ほりはるさんは絵を通して「世界に再び触れる」ことを学んだといいます。
絵日記を描き続けた2年半ののち、自然と手を離れたとき、
「自分のための表現」から「誰かに見せたい表現」へと、心が動き出しました。

“見せる”勇気が生んだ、新しい世界
SNSに投稿した一枚の絵。
そこに寄せられた反応が、次の一歩を後押ししました。
「人によって見え方が違うんだって気づいたんです。
私にとって“何でもない日常”が、誰かにとっては面白い。
それって、私の視点が誰かの新しい世界をひらくかもしれない、と思いました。」
描くことは、自己表現であると同時に、
他者と世界をつなぐ“パイプ”のようなもの。
閉じていた扉の先には、想像以上に温かなつながりが広がっていました。
鎌倉という街で描く理由
「日常の中で“つながり”を思い出すきっかけが、今の私にとっての“描くこと”なんです。」
鎌倉で暮らしながら、人との出会いや街の景色からインスピレーションを受けて描く。
「絵を描くことと暮らすことは、切り離せない」と語るほりはるさん。
その線は、風景の記録であり、人との対話でもあります。
「特別なテーマがあるわけではなく、人と街の中で生まれる“感じたいこと”を描き留めたいんです。」

「今の感覚」を大切にする生き方
「感情は生ものだと思う。だから“今”感じたことをそのまま描きたい。」
湘南スタイルマガジンなどの取材でも、
人の話を聞いたその日のうちに絵を描くというほりはるさん。
その背景には「描く線の鮮度」を大切にする想いがあります。


「話してくださった方の熱量を、そのまま線に込めたい。
輪郭をなぞるだけでは伝わらない、温度のある線を描きたいんです。」
後編につづく — “外に広がる表現”
内向きに描いてきた絵日記の時代を経て、
少しずつ“外の世界”へと広がっていくほりはるさん。
後編では、ホテルメトロポリタン鎌倉との仕事、
そして代表作《ひとにぎり》や《こころ模様》など、アーティストとしての歩みを伺います。
“描くことで世界とつながる”——その想いの先にある、新しい表現とは?
ここからつながる
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