パッシブハウスとは?

パッシブハウスとは、自然エネルギーを最大限に活用し、高い断熱性と気密性を備えることで、最小限のエネルギーで快適な居住環境を実現する住宅です。ドイツで生まれたこの概念は、日本の気候や風土に合わせて進化し、省エネ住宅として注目を集めています。
本記事では、パッシブハウスの特徴、メリット・デメリット、事例について詳しく解説します。
パッシブハウスの背景
パッシブハウスは、1990年代にドイツで生まれた省エネルギー住宅の概念で、自然エネルギーを最大限に活用する設計が特徴です。高断熱・高気密な構造により、冷暖房エネルギーを大幅に削減できることから、ヨーロッパを中心に広がり、日本でも注目を集めています。
日本では2010年にパッシブハウス・ジャパンが設立されました。
パッシブハウスの基準

パッシブハウスには、明確な基準があります。一般社団法人パッシブハウス・ジャパンに認定されるには、下記の3 つの基準のクリアが必須です。
基準項目 | 数値基準 |
年間冷暖房負荷 | 15kWh/m²以下 |
一次エネルギー消費量 | 家電を含んだ一次エネルギー消費量が 120 kWh / m²以下 |
気密性 | 50 Paの加圧時に漏気回数が 0.6 回以下 |
参考:オスモマガジン
さらに、下記では、パッシブハウス基準を満たすために必要だと考えられる具体的な構造を紹介します。
高断熱・高気密性能
パッシブハウスの条件を満たそうとした場合、断熱材の厚さ300mm以上(相当)を使用し、窓にはトリプルガラスを採用することで、外気温の影響を最小限に抑えることが求められます。
自然エネルギーの活用
南向きの大きな窓を設け、冬季には太陽光を積極的に取り入れ、室内を暖めます。夏季には庇やブラインドで日射を遮り、風通しの良い設計を採用することで、冷房エネルギーの削減を図ります。
エネルギー効率の向上
高性能な断熱材や窓、そして熱交換型換気システムの導入や家中を温められる間取り設計により、エネルギー効率を大幅に向上させます。
これらの特徴により、パッシブハウスは環境負荷の低減と快適な居住空間の両立を実現しています。
他の基準値との比較

ここでは、断熱性能を測る基準として、UA値(外皮平均熱貫流率)を用います。ここでは、UA値を元に、断熱等級、HEAT20基準、ZEH基準、パッシブハウス基準相当を値する数値を比較した数値を紹介します。
これにより、どの基準値が他の基準と一致しているかが一目でわかります。
住宅性能表示制度 (等級4)が、現行の省エネ基準を満たす最低レベルです。パッシブハウスでは、ZEHのように UA値の基準はありませんが、年間暖房負荷が 15 kWh / m²以下という基準をクリアすることが目標とされています。
パッシブハウスでの断熱性能は、一般的に、HEAT20 の G2 〜 G3 程度が推奨されており、 ZEH に比べても高い断熱性能を求められます。
等級(基準)「地域区分6(東京含む)」 | UA値 (W/m²K) | 対応する基準 |
断熱等級4(平成28年省エネ基準) | 0.87 | 最低限の省エネ基準 |
断熱等級5(ZEH基準) | 0.60 | ZEH基準 |
(HEAT20 G1概ね同等) | 0.56 | HEAT20 G1基準 |
断熱等級6(HEAT20 G2概ね同等) | 0.46 | HEAT20 G2基準 |
断熱等級7 (HEAT20 G3概ね同等) | 0.26 | HEAT20 G3基準(最高水準) |
パッシブハウス基準推奨 | 0.2以下 |
参考:国土交通省
断熱等級とは
断熱等級(正式名称:断熱等性能等級)とは、住宅の断熱性能を示す指標で、国土交通省が制定した「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づいて定められています。
等級は1から7までの7段階があり、等級が高いほど断熱性能が高いことを示します。
特に、2022年に新たに等級5、6、7が設けられ、等級5はZEH水準、等級6はHEAT20のG2グレード、等級7はHEAT20のG3グレードと概ね同等とされています。
HEAT20とは
HEAT20は、2009年に発足した「20年先を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会」の略称で、居住空間の温熱環境・エネルギー性能、建築耐久性の観点から、 外皮技術をはじめとする設計・技術に関する調査研究・技術開発と普及定着を図ることを目的とする団体です。
2020年に一般社団法人化しています。同法人は、快適で省エネルギーな住宅を実現するため、外皮性能の水準をG1、G2、G3の3段階に分類しています。
これらの基準は、将来的なエネルギー問題や環境負荷の低減を見据えて設定されており、特にG2やG3は高い断熱性能を求められます。
ZEHとは
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは、国が定めた基準で、年間の一次エネルギー消費量の収支を実質的にゼロにすることを目指した住宅のことです。具体的には、住宅の断熱性能を高め、高効率な設備を導入することでエネルギー消費を抑え、さらに太陽光発電などの再生可能エネルギーを活用して、消費エネルギーと創エネルギーのバランスを取ります。
日本政府は、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、ZEHの普及を推進しており、2030年には新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備を設置することを目指しています。
これらの基準や指標は、地球温暖化対策やエネルギー資源の有効活用を背景に策定されており、住宅の省エネルギー性能向上を通じて、持続可能な社会の実現を目指しています。
導入するメリット

パッシブハウスを導入することで、エネルギー消費量を大幅に削減すると共に快適な居住空間と、光熱費の削減が可能です。
高い断熱性と気密性を備えた設計により、冬は暖かく、夏は涼しい快適な室内環境を年間を通じて維持します。
また、冷暖房費や給湯費などの光熱費が大幅に削減され、長期的に経済的なメリットが得られます。
さらに、二酸化炭素排出量の削減による環境負荷の軽減にも貢献します。建物の高気密性は結露を防ぎ、構造体の劣化を防止するため、建物の寿命を延ばす効果も期待できます。
これらのメリットにより、パッシブハウスは経済的・環境的に優れた住まいの選択肢として注目されています。
導入するデメリット
パッシブハウスは多くのメリットを持つ一方で、いくつかのデメリットも存在します。
まず、初期建築コストの高さが挙げられます。高い断熱性能や気密性能を実現するために、高品質な断熱材やトリプルガラスの窓など、コストのかかる材料や設備を使用する必要があるため、一般的な住宅に比べて初期投資が増加します。
次に、設計・施工の難易度も課題です。地域の気候や土地の条件に適した高度な設計が必要であり、施工においても高い技術が求められます。
特に気密性を確保するためには、施工時の細部にまで注意を払わなければならず、熟練した施工者の存在が重要です。これらのデメリットを克服するには、長期的なエネルギーコストの削減や環境への貢献といったメリットとバランスを考慮し、適切なパートナーを選ぶことが重要です。
パッシブハウスの事例
ここではパッシブハウスの事例として、鎌倉のパッシブハウスを紹介いたします。
鎌倉パッシブハウス
鎌倉パッシブハウスは、2009年8月に神奈川県鎌倉市で建てられた日本初のパッシブハウス認定住宅です。この住宅は、ドイツ発祥の省エネ基準「パッシブハウス」を基に設計されており、延床面積93.06㎡(約28.15坪)の2階建て木造住宅です。
特徴と性能
鎌倉パッシブハウスは、高い断熱性と気密性を実現しており、冬は真綿に包まれるような暖かさ、夏は木質繊維断熱材の蓄熱効果と南北の風通しで涼しい快適な住環境を提供します。
一番小型のルームエアコン1台で家全体の冷暖房が可能で、オール電化でありながら極めて省エネルギーな住宅です。
さらに、敷地面積118.76㎡という限られた空間を有効活用するために、屋上をウッドデッキ化し、子どもたちの遊び場として開放しています。
まとめ

パッシブハウスは、高い断熱性と気密性、自然エネルギーの活用を組み合わせることで、快適な居住空間と省エネルギー性能を両立した未来型住宅です。
その背景や特徴、メリット・デメリットを理解することで、自身のライフスタイルや住環境に最適な選択が可能となります。
また、鎌倉パッシブハウスの事例に見るように、パッシブハウスは限られた敷地やコストの中でも持続可能な設計を実現できることを示しています。
環境と経済性の両面で優れた住宅として、今後さらに注目されることが予測されます。