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【鎌倉のひとに学びつながる】「鎌倉らしいフェアトレードタウンへ 前編」稲葉哲治さん

地域暮らし案内
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動画の要約内容

  • インタビュー:稲葉哲治氏(鎌倉エシカルラボ共同代表)

鎌倉市がフェアトレードタウンの認定を目指す中、その取り組みの中心を担う稲葉哲治氏に話を伺った。

フェアトレードとは、生産者に適正な対価を支払い、持続可能な生産活動を可能にする取引の仕組みだ。フェアトレードタウンの認定には、市民団体の存在や啓発活動の実施など6つの基準があり、鎌倉市は既にこれらを満たしている。

しかし稲葉氏が目指すのは、単なる認定取得ではない。歴史文化の街・鎌倉の特性を活かし、「フェアなコミュニケーションが行われているコミュニティ」としての新しいフェアトレードタウンの形を模索している。

その実現に向け、市民一人一人が身近なところからフェアトレードを意識し、視野を広げていくことの重要性を説く。鎌倉から次世代のフェアトレードリーダーを生み出すことも視野に入れた、意欲的な取り組みが続いている。

「鎌倉らしいフェアトレードタウンを目指して」前編

  • インタビュー:稲葉哲治氏(鎌倉エシカルラボ共同代表、えしかる屋プロデューサー)

山崎:まず自己紹介をお願いできますか?

稲葉:私は稲葉哲治と申します。鎌倉市をフェアトレードタウンとして認定を受け、それを継続していくための市民団体「鎌倉エシカルラボ」の共同代表を務めています。また、鎌倉の雪ノ下にある「エシカル屋」というエシカル商品のセレクトショップのプロデューサーとして、店舗の企画や弁当の実施、販売などを行っています。

山崎:フェアトレードの基本的な概念を教えていただけますか?

稲葉:フェアトレードとは、直訳すると「公平な取引」という意味です。例えば、商品が私たちの手元に届くまでには、生産者から消費者まで様々な人の手を経ています。しかし、より安い商品を求める消費者の要望により、生産者への買い叩きが起こり、生産者が持続可能な生活を送れない状況が世界中で発生しています。

フェアトレードは、生産者に適正な対価を支払い、次の生産のための設備投資や教育投資ができるような関係性を築くことを目指しています。これは単なる物作りだけでなく、サービス提供なども含まれます。

当初、フェアトレードは人権の観点から語られることが多かったのですが、近年は環境面にも注目が集まっています。過剰な生産や農薬使用による環境破壊なども重要な課題として認識されています。

山崎:稲葉さんご自身は、この分野でどのような活動をされているのですか?

稲葉:私がフェアトレードに関わり始めたのは2012年11月です。当時、学生団体からフェアトレードコーヒーの普及についての相談を受けたことがきっかけでした。その経験から、従来の大量生産・大量消費の考え方から脱却する必要性を感じました。

その後、エシカルファッションブランドでボランティアとして活動し、2016年からはプロデューサーとして関わるようになりました。2020年末に関わっていた店舗が閉店し、オーナーが鎌倉で独立。私もそれに伴って鎌倉に移り、2022年頃から鎌倉のフェアトレードタウン化に向けた活動を始めました。

また、本業では人事関係、特にダイバーシティやジェンダー、男性の特権性などについても専門的に取り組んでいます。2015年頃からは「働き方のフェアトレード」という考え方を提唱しており、労働における公平な関係性の構築についても発信を続けています。

山崎:フェアトレードタウンの認定について、具体的に教えていただけますか?

稲葉:フェアトレードタウンとは、都市全体でフェアトレードを推進していることが認められた地域のことです。これは国際的な認定で、世界では2000以上の都市が認定を受けています。日本では熊本、名古屋、札幌、浜松、いなべ、逗子の6都市が認定されています。

認定には6つの基準があります:

  1. フェアトレードを推進する市民団体の存在
  2. 街でのフェアトレード啓発活動の実施
  3. 街の企業、寺社、学校、NPOなどによるフェアトレード推進
  4. 地域活動での浸透(例:鎌倉では大船から北鎌倉に抜けるトンネルのフェアトレード壁画など)
  5. フェアトレード商品を扱う店舗の存在(人口1万人につき1店舗が基準)
  6. 自治体による支援

山崎:鎌倉市の現状はいかがですか?

稲葉:幸いなことに、鎌倉市は既にこの6つの基準を満たしています。私たち鎌倉エシカルラボが市民団体として活動し、様々なイベントでの出展や啓発活動を行っています。また、地元企業の協力も得られており、商工会議所でも前向きな反応をいただいています。

特筆すべきは、市議会が全会一致でフェアトレードタウン推進の決議を可決し、市長も宣言を行ってくれたことです。現在は認定申請の段階にあります。

山崎:フェアトレード商品を扱う店舗について、専門店である必要はありますか?

稲葉:いいえ、一部でも扱っていれば構いません。第三者機関が認定したフェアトレード商品(ラベル付き商品)を扱っていることが望ましいですが、一般のスーパーやコンビニ、飲食店でもフェアトレード商品を使用していれば対象となります。

実際、フェアトレード商品は品質が良く美味しいものが多いので、お店のブランド価値向上にもつながります。これは、生産地の環境を守りながら、良質な原材料を安定的に届けているためです。

山崎:地域住民や企業ができることについて、具体的な取り組みを教えてください。

稲葉:私たち鎌倉エシカルラボは、単なる認定取得を目標としているわけではありません。「鎌倉らしいフェアトレードタウン」として、新しいあり方を模索しています。

鎌倉は既に世界的に知られた観光地であり、サステナブルな街としても認知されています。そのため、従来のフェアトレードタウンのメリットを超えて、「フェアなコミュニケーションが行われているコミュニティ」を目指しています。

具体的には、フェアトレード商品を通じて、生産者との繋がりを意識し、視野を広げていくことが重要です。また、歴史文化の街、宗教の街である鎌倉の特性を活かし、自然・文化・歴史・宗教・ビジネスなど、様々な要素を融合させた新しいフェアトレードタウンの形を創造していきたいと考えています。

そのため、組織名も「鎌倉フェアトレードタウンの会」ではなく「鎌倉エシカルラボ」としました。エシカル(倫理的)という視点から、みんなで集まって新たな未来のコミュニティを実現していく実験の場として活動を続けています。

山崎:地域の方々や企業ができることについて、もう少し具体的な例を教えていただけますか?

稲葉:まず基本的なこととして、フェアトレード活動への参加を呼びかけています。しかし、より重要なのは、日常生活の中でフェアトレードを意識するきっかけづくりです。

例えば、手元にあるみかんがどこから来たのか考えてみる。和歌山県や愛媛県だと思っていたものが、実は南米から来ているかもしれない。そうした気づきを通して、私たちの生活が様々な繋がりの中にあることを認識できます。

このように、身の回りのものから視野を広げ、自分の中の「フレーム」を拡大していくことが大切です。フェアトレード商品を使ってみたり、みんなで話し合ってみたりすることで、新しい気づきが生まれます。

また、フェアなコミュニケーションは家庭内や友人関係など、身近なところから始められます。社会の課題に気づいたとき、見過ごしてしまえば自分もその課題の一部となってしまいます。

私たちの理想は、鎌倉から次世代のフェアトレードリーダーが生まれることです。また、観光客の方々にも、鎌倉を訪れることで何か良いことができたと感じてもらえるような街づくりを目指しています。

このように、稲葉氏は単なるフェアトレードタウンの認定取得にとどまらず、鎌倉の特性を活かした新しいコミュニティづくりのビジョンを語ってくれました。歴史ある街・鎌倉から、フェアトレードを通じた新しい未来の形が見えてきそうです。

【後編】鎌倉らしいフェアトレードタウンへ続きます!

鎌倉ひとはこでは、山崎奈々絵さんの『鎌倉のひとに学びつながる』の人とまちを繋げる活動を応援しています。

投稿者プロフィール

松本 尚樹
松本 尚樹
・エコ住宅アドバイザー
・環境不動産仲介事業
・Webディレクター

生物多様性の保全を目的とし、不動産仲介を通して、自然と共生するライフスタイルや環境負荷の少ない住宅の提案、生物多様性保全活動、環境教育活動など行なっております。

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