ひとまちコラムでは、鎌倉の地域で活動されている方をご紹介しています。
今回は、鎌倉を拠点に環境に優しいライフスタイルを提案・展開している、みなみなおこさんにお話を伺いました。
可愛い湘南モチーフのスチールカップを、鎌倉市内のコーヒー店やイベント、SNSなどで目にしたことがある方は多いのではないでしょうか。使い捨てプラスチックに代わる選択肢として開発された「かまくらスチールカップ」は、単なるリユース容器の枠を超え、海や森の再生から地域活性化まで、様々な可能性を秘めたプロジェクトとして注目を集めています。
この取材の背景
私がこのカップの存在を知ったのは、2024年、辻堂海浜公園で行われたイベントの時でした。
以前住んでいた宮古島でも、屋外イベント時はこのようなカップを使用していたので、とても親近感が湧き、嬉しくなりました。
①地域ぐるみでこのような取り組みにトライしていること
②環境への配慮、そして無理なく普及、認知されていっていること
特に以上の二点にとても共感を覚え、みなみさんと何か接点を持ちたいな〜なんて考えていました。
そこで、取材しよう!と思い、この度お声がけさせていただき、快く受けてくださいました☺︎
かまくらスチールカップ構想のきっかけ
近年のSDGsの風潮やコロナ禍を経て、環境問題を意識するようになったという方は多いのではないでしょうか。
私は以前住んでいた宮古島で、環境問題や人間がつくりだしたものが海へ与えている影響を目の当たりにしました。そのことがきっかけで、無理なく自分にできること(マイボトルを常に持ち歩きペットボトル容器を買わないなど)を日常に取り入れています。かまくらスチールカップの構想をする上で、みなみさんご自身のきっかけやどのような経緯があったのか伺いました。
(みなみさん)
きっかけは2018年、由比ガ浜に打ち上げられたシロナガスクジラ。その死因がプラスチックゴミだったことを機に、普段の生活からプラスチックの使用をやめる事を試みてみました。しかし、全てをやめるということは現実的に難しく、朝の日常生活でプラスチック使用をやめてみるということに切り替えてみました。
それをモーニングバトンと名付け、誰でも気軽に取り入れやすいチャレンジとして動画を作成し発信していていくこともしました。
無理せず快適で心地よく、いつの間にかプラごみが減っていたという体験が気持ちよくて嬉しかったです。
けれども実際問題として、街には過剰包装されたものや、プラごみとなりただ捨てられるだけのパッケージが主流であることを実感しました。つくる側とつかう側が一緒になってその課題を解決しない限り、この大量消費ループが終わらないと感じていました。
理想を一枚の絵に描いたことが転機に!
(みなみさん)
つくる側とつかう側が一緒になり、小学校なども巻き込んでごみを集め、製造業の技術で活用する形で、頭の中にあった理想像を一枚のポンチ絵としてアウトプットしました。
そして、以前よりブランディングで関わっていた(株)IBLC(技術系のコンサルティング会社)に相談。数々の大手製造業をクライアントに持っているので、そこで大手鉄鋼メーカーが自社の技術を使い何かできないか模索しているという情報を知ります。
プレゼン時間5分という限られた時間の中で、ポンチ絵をプレゼンしたところ奇跡的に採用されました。
2020年に「good sharing kamakura」という名前でプロジェクトを開始。
技術の知見やもの、こと、などを地域でシェアリングしながら、社会課題を解決するというビジネスモデルを展開しています。
大手企業には資金力がある、だけど地域のニーズが分からない。
逆に、地域は具体的なニーズがあっても資金が不足している。
そこをマッチングしたいと考えたのです。
2021年からは、テストマーケティングとして、プロジェクトメンバーで実際にテイクアウト体験をしたり、お店側の意見を聞くなどした上で見えてきた改善点を反映させ、プロトタイプとして実際にイベントなどで使っていただきました。
提供側や消費者側の”つかう側”が心地よく使えるよう改良を重ねました。
そして地域のテストマーケティングで繋がったご縁から、逗子映画祭でも使用してもらえることに!そこから、鎌人いち場や辻堂海浜公園でのイベント、さらには湘南以外の地方イベントにて実際にカップを使用してもらうことができました。
出典:みなみさんが立ちあげたプロジェクトgood sharing kamakura HP
(ライター咲子)
ちなみに私は、稲村ガ崎で行われたなみぼんにて購入!欲しいな〜、いくらくらいなのかなぁ・・・と思いながらブースに行くと、なんとびっくりワンコイン!即購入し、カップにビールを入れてもらい乾杯しました。私はあらかじめ知っていての即購入でしたが、一緒に行った友人は初見で即購入していました!そしてキンキンなビールの口当たりにとても満足していました。
地域でつくるスチールカップ
(みなみさん)
2023年から現在は、鎌倉市内でスペシャリティコーヒーを提供するコーヒー屋さん12店舗に協力してもらい、販売と回収を行なっています。
それらのコーヒー屋さんは、共通のお客さんが多いのが特徴で、嬉しいことに常連さんや、オーナーさんがカップの良さを横展開してくれたことで知名度も上がり、自然と広がっていってくれました。
いいものを共有したい!という思いをもつ鎌倉の地域性もあるかもしれないですが、スチールカップを起点に会話や交流が生まれ、単なる資源リサイクルの目的以外の側面も見えて、お店のオーナーさんからの喜びの声をいただき嬉しかったです。
(ライター咲子)
これまでテストマーケティングを繰り返しながら、現在2024年は湘南モチーフの可愛らしい素敵なデザインのスチールカップになっていますが、意外なことに以前のプロトタイプは評判がイマイチだったと言います。
(みなみさん)
初年度の型は、ペン立てや箸立てみたい。。その後のタイプはGOMI0(ゴミゼロ)のステッカーを貼ったことにより、「ちょっと硬いイメージ」「飲料を飲むのにゴミと入っているのが気になる」などの反響でした。
そこで今回のタイプは、思い切ってデザインに注力して刷新してみることに。コスト面の関係などでなかなか踏み切れないところではありましたが、協業の(株)IBLCさんのひと声もあり、実現へと踏み出せました。
その結果、デザインの影響力は大きい!ということを実感しました。
同じカップなのに、お土産にしたい!お金を出してでも買いたい!などデザインが価値を生み出してくれている。我慢してプラスチックの代わりに使うという意識ではなく、カップ自体の付加価値も備わりました。
新たな消費スタイルへ
(ライター咲子)
テストマーケティングを実際にされている中で、今後のビジョンや目標としてはどのような考えがありますか?
(みなみさん)
湘南以外の地域でも大型イベントで、ご当地カップのようにその地域ならではのデザインで、地域共通のイベントカップのように普及させていきたいです。
地域の人たちが、自分たちで選んだものが地域の環境を良くしていく、それが幸福感へと繋がってくれたらと考えています。その本質には、みんなで作るからこそ愛着が沸いて、商品を広めたくなる、地域ならではの新たな消費スタイルができると感じているからです。“ご近所のAさんがいいというものは安心して自分も購入できる”
などといった、自分の身近な範囲にフォーカスを向け、且つ自分の住む地域の環境を良くするために気持ちよくお金を使いたい!という「ご近所ファンディング」のようなスタイルがくるのではないかと考えています。
目指すは藻場再生の先のロマン
(みなみさん)
日本各地の海で、近年磯焼けが問題となっています。磯焼けとは、生態系バランスの崩れや水温上昇、海中の栄養素不足などが原因で、本来海藻などで潤っていた海の中が砂漠化している現象です。
かまくらスチールカップの原料、鉄の特性を活かし、藻場再生への実証実験も現在トライ中です。鉄とセメント等を混ぜ、鉄イオンを発生させる鉄の団子やバー、多孔質体など、様々なパターンで実験検証をしています。
▲鉄のバーと多孔質バーの試料。多孔質体はチョコクランチのような形状でした!
藻場再生がうまくいった先には、その藻場をもつ漁業組合と企業が連携し(ブルーカーボンクレジット)、それにより地域経済の循環や活性化に繋がることができたら最高です!自分たちがいいと思ったものを購入し、それが地域や環境を良くしていくものへと変わり、地域経済への循環を生む。かまくらスチールカップを通して、そんな循環が起こる世界を見てみたいのです。
(ライター咲子)
この取り組みの一番の強みは、地域の人たちとの繋がりです。地域の人が牽引し繋げてくれて、ひとりでは達成できないことも、みんなでやればできる!そういった仕掛けを大事にしている。とキラキラした表情でお話しされていました。
大企業・国・県・自治体を巻き込む仕組みを創っている。実現したらどんなに嬉しいことか。
みなみさんたちの夢が、関わった人みんなの夢でもあります。
出典:PR TIMES ブルーカーボンクレジット解説
鉄が溶けてなくなる、というイメージではなく錆びた鉄に藻や水草などの種が付着していくイメージ。
沖縄や海外の海に潜り、沈没船や人工物に珊瑚や藻などが付着し、原型はありながらも今は生物の住処となっているのを間近で度々見ていたので、パッとイメージが湧きました。
▲沈没潜に長い月日をかけ珊瑚の種が付着し、ほぼ珊瑚に覆われ魚や生物の住処になっている。
今後の展望
(みなみさん)
次に取り組んで行きたいのは防災分野です。
“逃げる勇気を地域と一緒に”というコンセプトで、カラーレスキューというものを考えています。
個人で行える防災と行政が取り組む防災。その隙間を埋める防災企画を「アクティブ防災」と呼んでいます。
それには、複数社と提携して点ではなく面で防災に取り組む必要があると考えています。、災害発生後に生活の不快さを軽減できる取り組みも検討しています。防災商品だけでは売れないものも、かまくらスチールカップの経験を活かし、色の技術を持っている企業と地域のプラットフォーム(good sharing kamakura)とでテストマーケティングしながら作っていくことが可能だと思っています。
(ライター咲子)
カラーレスキューというネーミングがポップで、防災という後回しにしがちな分野ですが、どんな人でも受け入れやすく、新しい防災のかたちになるのではないかという印象を受けました。
取材後記
保有技術を持った企業と地域の力で社会問題を解決していく、そんな新しいビジネスモデルを展開しているみなみさん。その原点は、大手住宅用品メーカー時代に培ったブランディング力でした。独立し、まずは対個人へのパーソナルブランディングから始めました。その人が持っている資質に着目し、見極めるということをしていく中で、事業や会社からの依頼が増え始め(株)IBLCと出会いました。
当時、個人事業主が大企業と仕事をするというのが珍しく、気になり声をかけてくれたといいます。そこから(株)IBLCと協業が始まり、現在のビジネススタイルを確立されています。
今回取材するにあたり、HPやブログなどひと通り目を通させていただき、スチールカップ誕生までの背景やプロセス、プロジェクトの現在地など、ある程度は把握したつもりでいましたが、実際にお話を伺い、みなみさんの考えや思いに触れることで、スチールカップのことをより詳しく具体的に知ることができました。
何かを実現させるには、強烈な強い動機が必要となってくると思いますが、「無理せず快適で心地よく、そして気づいたら自分の選択が街を良くするものだった」という経験が軸になっているみなみさん。
決して過剰になるわけではなく、さりげないアクションが実は大きなアクションへと繋がるという仕掛けが、誰にでも手に取りやすく参加しやすいものとなっています。
試作品段階から実際に使っていきながら改良していくという点もユニークで、製造業の大企業にはない発想。それにより、地域で育てた感覚が生まれ、愛着が湧き応援したくなります。
そして今回、スチールカップの先にある構想や、アクティブ防災のアイディアなどといった、壮大かつ実現性の高いお話をしてくださいました。どれも私たちの身近にある社会問題です。それらを少しでもポジティブ転換させたいという強い意思を感じました。あくまでも過剰にならず、強制されることもなく、無理せず快適で心地よい選択ができるように。
このような選択を多くの人ができるようになることで、余計な争いが減り、本当の意味で循環する世の中になるのではないでしょうか。そんなことを想像しながら、なんだかドラマの一部に入り込んだ気分になりました。
私たち鎌倉ひとはことも「循環」を大切にしています。共通する点や共感することが沢山あり、お話を聞きながらとてもワクワクしました。
今後の更なるご活躍が楽しみです!
みなみさん、貴重なお話を沢山ありがとうございました!!
投稿者プロフィール
思い立ったら行動!やらずにはいられません!
自分に嘘をつかずに、心が喜ぶ選択を日々していきたいです!
自然やスポーツ、猫が大好き⭐︎
この美しい地球がいつまでも続いていってほしい。。!無理なくできるアクションを続けていくこと、ここ鎌倉には同じ意識の人が多くいると思うので、暮らしやすく気持ちがいいです。
共生し循環する暮らしを創っていくのが目標!
三角ではなくまぁるい世の中になることを願っています。
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