鎌倉ひとはこでは、山崎奈々絵さんのYouTube channel『鎌倉のひとに学びつながる』を通じて、鎌倉の魅力的な人々とまちを繋げる活動を応援しています。今回は、鎌倉市にあるシェアリビング「NIHO Kamakura」を運営する高浜拓也さんのインタビューをお届けします。
この記事のポイント
- シェアハウスのリビングだけを街中に設置した新しいコミュニティ空間「シェアリビング」
- 「健やかな人生を共に」という理念で、人々が緩やかに助け合う場を創出
- 幼児から高齢者まで多様な世代が自由に使える空間を提供
- パナソニックの新規事業として、テクノロジーも活用した「街の仕組み屋さん」の役割も
あらすじ
現代社会の孤独な働き方に挑む、新しいコミュニティの形「シェアリビング」。シェアハウスのリビングを街中に設置し、赤ちゃんから83歳のお年寄りまで、多様な人々が集える革新的な空間として注目を集めています。
パナソニックの新規事業「niho kamakura」を立ち上げた高浜拓也さんは、「健やかな人生を共に」という理念のもと、人々が緩やかに助け合える場を目指しています。テクノロジーを活用した「街の仕組み屋さん」として、鎌倉ならではのコミュニティづくりに挑戦します。
「鎌倉のまちの人が集うシェアリビング」前編
インタビュー:高浜拓也氏(パナソニック Niho kamakura 運営)
山崎: 自己紹介をお願いします。
高浜: 現在パナソニックに所属し、シェアリビングというコンセプトでこの場所を立ち上げました。大阪出身で、京都の大学を卒業後、東京で働き、1年半前に鎌倉に引っ越してきました。
シェアリビングの誕生ストーリー
山崎: シェアリビングのコンセプトに至った経緯を教えてください。
高浜: 大学時代のシェアハウス経験が原点です。京都で4人で暮らした時、夜中まで話し、朝は誰かが作ってくれる朝食。経済的な価値以上の豊かさを感じました。
当時、経済学部にいて、GDPでは測れない豊かさに感動したんです。そこから、シェアする暮らし方に可能性を感じ、パナソニックに入社。住空間を丸ごと作れる会社だからこそ、新しい空間づくりに挑戦できると考えました。
渋谷でのシェアハウス運営も経験し、子供たちと過ごす中で、人が集う場の魅力を実感。一緒に暮らすのは距離が近すぎるけれど、リビングだけなら、ちょうどいい距離感で人々が交流できるのではないかと思いついたんです。
立ち上げの苦労
山崎: 立ち上げは大変だったのでしょうか?
高浜: 「シェアリビング」は世界的にもほぼ前例のない取り組みでした。社内でも多くの疑問や反対意見がありました。
主な課題は:
- リビングに来る理由は?
- 人々はどうやって知り合うの?
- ユーザーのニーズは?
コミュニティスペースやシェアスペースは非営利が多く、継続が難しいのが現状。そこを突破するため、半年から1年かけて徹底的に調査しました。
幸い、会社のビジョンである「共助社会」と方向性が一致し、チャレンジすることができました。
物件との出会い
山崎: どのように物件を見つけたのですか?
高浜: 最初は東京で探していました。リモートワークで誰とも話さない生活に限界を感じ、シェアリビングの必要性を強く感じていたんです。
東京では1年間貸してくれる場所が見つからず、苦労していました。そんな中、鎌倉の方が面白がってくれて、物件を貸してくださったんです。この出会いが、NIHO Kamakura誕生の決定的なきっかけになりました。
物件が決まってからも、小さなスペースをどう活用するか、家具の検討に約半年かけるなど、細部にこだわり抜きました。
NIHO Kamakuraの理念 – 「健やかな人生を共に」
山崎: NIHO Kamakuraの理念について教えてください。
高浜: 「健やかな人生を共に」が私たちの基本理念です。これまでの働き方は、自己実現=働き詰め、結婚=家に閉じこもるといった、人を縛るような生き方が多かったんです。
最近は、ワークライフバランスが重視され、仕事も生活も大切にする考え方が広がっています。「健やかな人生」とは、そういった自由で豊かな生き方を意味しています。
毎日の締め切りや家事に追われる中で、簡単に健やかな人生は送れません。だからこそ、小さな助け合いが大切なんです。
例えば:
- 子供の面倒を5分だけ見てもらえる
- 仕事で疲れた日に「お疲れ様」と声をかけてもらえる
こうした緩やかな助け合いが、人生をもっと豊かにできると信じています。
多様な使い方ができる場所
高浜: NIHO Kamakuraは、どう使っていただいても構いません。
- お友達を呼んで料理
- ゆっくり本を読書
- ソファーで昼寝
その人なりの「健やかな人生」に必要な時間や助けを得られる場所でありたいと考えています。
山崎: 利用者の中で、予想外の使い方はありましたか?
高浜: 驚いたのは、幼稚園児の親子連れや、83歳の高校OBの同窓会が開かれたこと。赤ちゃんから高齢者まで、多様な人々が集まる様子を見て、私の描いていたビジョンが現実になりつつあることに感動しています。
地域の人々が形作る空間
山崎: 地域の人たちによってNIHO Kamakuraの形が作られていく印象ですね。
高浜: その通りです。主役は利用者の方々。スタッフは彼らを支える立場です。「こんな使い方がしたい」という提案は常に歓迎しています。
これまでに、インタビュー撮影やDJイベントなど、想定外の使い方も生まれています。街の人々が遊び、表現できる場所が増えることで、想像性や自己表現が広がると信じています。
多様なニーズの調和
山崎: 新しい出会いとリラックスという、一見矛盾する要素をどう調和させていますか?
高浜: 日々模索しています。リビングは多様な使い方ができるため、利用者同士が重なり合い、使いづらくなることもあります。
対策として:
- 平日日中は静かな作業中心
- 土日は親子連れ歓迎
- 平日夜はイベント推奨
スタッフは利用者の雰囲気や目的を察知し、適切な場所や配慮を提供します。
テクノロジーの活用
LINEを通じて、リアルタイムで空間の混雑状況を確認できるシステムを導入。スタッフの負担を減らしながら、利用者に最適な体験を提供しています。
他にもパナソニックならではのアプローチで、テクノロジーを人々の快適さのために活用する試みをしています。
「街の仕組み屋さん」としての役割
山崎: 高浜さんの「街の仕組み屋さん」的な役割は、どんなものですか?
高浜: ITの世界は複雑化し、AIツールも増えています。何をどう使えばいいか分からない時代だからこそ、昔の「街の電気屋さん」のように、テクノロジーと人々をつなぐ役割が重要だと考えています。
鎌倉という場所の選択
山崎: なぜ鎌倉を選んだのですか?
高浜: 偶然が大きいですが、日々の暮らしを大切にする街を意識していました。単なるオフィス街ではなく、ワークとライフのバランスを重視する街を探していたんです。
鎌倉の人々の温かさに感動しています。街の人々への信頼感、気軽なコミュニケーション。東京とは全く異なる、人と人とのつながりの豊かさを日々感じています。
まとめ
高浜拓也さんの挑戦は、単なる新しいコミュニティスペースの創造を超えています。パナソニックという大企業の中で、「街の仕組み屋さん」として革新的なアプローチを追求する彼の姿勢は、現代社会の孤立や分断に対する一つの解答と言えるのではないでしょうか。
プロジェクトへの想い
キーポイント | 内容 |
理念 | 「健やかな人生を共に」 |
革新性 | シェアハウスのリビングを街中に展開 |
対象 | 赤ちゃんから83歳まで |
目的 | 緩やかな人々の助け合い |
高浜さんが描く未来
鎌倉という土地柄を巧みに活用し、多様な人々が自然に交流できる場を作り上げる高浜さんの取り組みは、これからのコミュニティのあり方に大きなヒントを与えてくれるように思います。
【後編】鎌倉のまちの人が集う「シェアリビング」とは?に続きます!
鎌倉ひとはこでは、山崎奈々絵さんの
の人とまちを繋げる活動を応援しています。
投稿者プロフィール
・環境不動産仲介事業
・Webディレクター
生物多様性の保全を目的とし、不動産仲介を通して、自然と共生するライフスタイルや環境負荷の少ない住宅の提案、生物多様性保全活動、環境教育活動など行なっております。
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